Tencent支援の新子会社設立は恩恵薄く
Ubisoft傘下2社、『Division』集中やモバイル転向を表明。リストラも実施へ

Ubisoft傘下の2つのゲーム開発スタジオが人員削減計画を発表した。ひとつは『Tom Clancy’s The Division』シリーズを手掛ける『Avatar: Frontiers of Pandora』を開発したMassive Entertainment、もうひとつはマルチプレイヤーバイクアドベンチャーゲーム『Trials』を開発したRedLynxだ。
Massive Entertainmentの代表者は、10月22日にLinkedInでスタジオのリソース再編実施予定を明かし「The Divisionシリーズと、SnowdropやUbisoft Connectなど、ゲームを支えるテクノロジーに引き続き注力していく」と今後に向けた決意を表明した。
組織再編の一環として人員削減も計画しており、対象となる従業員への対応として「責任ある移行支援のため、われわれは自主的なキャリア移行プログラムを導入し、資格のあるチームメンバーに資金援助やキャリア支援を含む包括的なパッケージによるサポートを受けつつ、自らの望む条件で次のキャリアステップに進むチャンスを提供した」と述べている。
とはいえ、Massiveはどれくらいの人員を削減しようとしているのか、いつの時点、どんな条件がクリアされれば「十分な再編」が完了したとみなすのかを具体的に示していない。そのため、現在の退職優遇措置を受けずに留まる決断をした従業員も、ある日突然に解雇される可能性を覚悟しなければならない雰囲気がリリース文からは漂っているように思える。

Massive Entertainmentといえば、上に記した『Tom Clancy’s The Division』シリーズが代表作と言えるが、ここ数年はヒット作に恵まれておらず、『Star Wars: Outlaws(スター・ウォーズ:無法者たち)』ではリリース直後から大量のバグが報告された。ゲームの難易度調整も行き届いておらず、一部のミッションが「難しすぎてクリアできない」といった悲鳴もプレイヤーからあがっていたことなどが記憶に新しい。

現在、同スタジオは「ロードマップに完全にコミット」しているとし、『The Division 2』『The Division 2: Survivors』『The Division Resurgence』『The Division 3』といった一連のタイトルの開発を継続している。
もう一つの子会社であるRedLynxは、Ubisoftが同社の今後に向けた組織再編案を発表したことを受け、この提案について決定を下す前に、従業員との団体交渉を行うとしている。
団体交渉は主に開発チームと管理チームを対象としており、Ubisoftのゲームエンジンである「Snowdrop」を手掛けるチームは除外され、11月末を終了予定とする団体交渉で最大60人を削減する予定だ。
一方、RedLynxのマネージングディレクターであるセリーヌ・パスラ氏は「この提案は、われわれが下すべき難しい選択を反映し、慎重に検討した結果だ。われわれはこの発表の重大さを認識しており、この提案が個人やチームに与える影響を認識したいと考えている」「提案された再編により、RedLynxは今後もUbisoftの将来において重要な役割を担い、モバイルデバイスでの技術的卓越性を推進し、小型画面における Ubisoft のクロスプラットフォームおよびマルチプラットフォーム機能を強化して、プレイヤーたちのリーチを拡大することができると確信している」と述べた。
具体的には、RedLynxはこれまでマルチプラットフォームで開発に取り組んで来たところを、今後はモバイルやその他の小画面向けプロジェクトに特化する方向性となり、まずはスタジオが主導する未発表のモバイルプロジェクト2件を皮切りに、その取り組みを進めていくとした。
Ubisoftは近年グループ全体で業績が低迷しており、最近テンセントの支援を受けた新子会社「Vantage Studios」を設立した。Vantage Studiosは『Assassin’s Creed』、『 Far Cry』、『Rainbow Six』という、Ubisoftの屋台骨とも言える作品の開発を専門に手掛けていくとしており、トップにはUbisoftの創業家からCharlie Guillemot氏が共同CEOとして就任した。
同社の株式25%を保有するTencentは、Vantage Studiosの運営に関してはあくまで「助言」レベルの関わりに留まるとされているが、Ubisoftの中でも特に人気の高いシリーズ作品に対する「助言」が、どのように影響を及ぼすのかも気になるところだ。
また、Vantage Studiosが関わらない作品やプロジェクトを手掛けることになる既存の傘下スタジオに対してUbisoftは、「世界中のスタジオネットワーク全体において、簡素化、コスト削減、そして優先順位付けと効率性の向上を図る」ことを目指すと述べている。Vantage Studios以外のUbisoft傘下スタジオには、今後さらに再編の波が押し寄せるかもしれない。
- Source: Massive Entertainment(LinkedIn) RedLynx
- via: Engadget
