高度なAIモデル処理がデスクトップで

NVIDIA、“個人向けAIスパコン”こと「DGX Spark」を発売。価格は3999ドルから

Munenori Taniguchi

Image:NVIDIA

NVIDIAは、「世界の AI 開発者」に向けて高度なAIモデルも扱えるという高性能コンピューターDGX Sparkを発売した。価格は3999ドル(約60万4000円)から。

DGX Sparkは、NVIDIAのGB10 Grace Blackwell Superchip、128GB統合RAM、最大4TBのNVMe SSDストレージを搭載する。

NVIDIAが「世界最小のAIスーパーコンピューター」と呼ぶこのミニPCは、ペタフロップスのAI性能(毎秒1000億回の計算)を発揮し、最大2000億個のパラメータを持つAIモデルを処理できるという。また、デスクに楽に収まるコンパクトサイズで、標準電源コンセントで動作する手軽さも備えている。

AIスーパーコンピューターがApple Vision Proと同程度の価格で手に入ると考えればお買い得な気もする。そんなDGX Sparkだが、Dell、Lenovo、HP、Asus、AcerといったPCメーカーもGB10 Grace Blackwellを搭載するカスタムPCを用意している。

たとえばAcerはGB10 Grace Blackwellを搭載し、128GB RAM、4TBストレージ、Wi-Fi 7、HDMI 2.1b、イーサネット、USB-Cポート×4という入出力を搭載して3999ドルで販売している。

そう考えると、NVIDIAのAIスパコンもそれほど特別なものではないとも言える。だが、数年前なら電力を大量に消費するデータセンターへのアクセスを必要としていたレベルの性能がミニPCサイズになって個人で購入できること自体は、夢のような話でもある。

今年初め、Spark(当初はDigitsと呼ばれていた)を発表したNVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、「あらゆるデータサイエンティスト、AI研究者、そして学生の机上にAIスーパーコンピューターを置けば、AI時代を担い、形作る力を与えることができる」と豪語した。

The Registerは「このマシンはNVIDIAのラインナップの中で最速のGPUからは程遠い。大規模言語モデル(LLM)推論、ファインチューニング、画像生成といった分野でもRTX 5090に勝てるべくもなく、ましてゲーム用途では遠く及ばない」と初心者をたしなめつつ、「GX Sparkや今後市場に登場するGB10ベースのシステム群が実現できるのは、現行の5090や他のコンシューマー向けグラフィックスカードでは到底処理できないようなAIモデルを動かすことだ」と、このマシンがあくまでAIモデルのためにあると伝えている

RTX 5090は誰が見ても超高性能GPUだが、明確にコンシューマー向けのGPUであり、AI研究用途などで用いるにはVRAMの容量が足りていない。

DGX SparkはLPDDR5xの128GB RAMを搭載しており、これはNVIDIAのワークステーションGPUポートフォリオで最大容量だ。RTX 50系が搭載するGDDR7に比べれば、そのアクセススピードはウサギとカメほども違うが、Sparkはパフォーマンスと帯域幅よりも、純粋なキャパシティを確保し、大容量を武器に4ビット精度で最大2000億パラメータのモデルで推論を実行したり、最大700億パラメータのモデルを微調整したりすることを可能としている。

OSにはNVIDIA独自のDGX OS(Ubuntuからフォークしたもの)を搭載し、AI開発者にとって極めて重要なCUDAソフトウェアスタックをサポートしている。ArmベースのチップとLinuxベースのOSで稼働するため、知識があるゲーマーなら、少し手間をかけることでこれを高価なゲームマシンにすることもできるかもしれない。

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