モーター音をセンサーで拾い、エレキギターのように増幅します
フェラーリ初のBEV「エレットリカ」は疑似エンジン音でなくリアルな“電気エンジン音”を奏でる

10月9日、スーパースポーツカーの代名詞フェラーリは、同社初のBEV「エレットリカ(Elettrica)」の一部、主に技術的な部分に関する発表を行った。
F1世界選手権に参戦するためにスポーツカーを売っているとも言われるフェラーリだけに、今回発表された技術に関しても「2009年のF1マシンに搭載された最初のハイブリッドソリューションを起点とした、電動化に向けた長きにわたる技術研究の集大成」だと説明している。
誰もが最初にチェックするであろうその最高時速は、193mph(約313km/h)で、ブーストモード時の出力は最大1000馬力になるとされている(最終的な合計出力は未確定)。とのこと。現状ではWLTPシステムで計測された航続距離は329マイル(約520km)とされ、一般的な内燃式自動車が燃料満タンから走行可能な距離と大きく変わらない。
一部の電動スポーツカーは、走行時にわざわざエンジン音のサンプルを用意し、それをスピーカーから鳴らすことで、スポーツカー独特の雰囲気を演出している。だがその多くは、本物のエンジン音を知る人の耳には絶対的に物足りず、決して好評とは言えない。
フェラーリはこの点に対して「電気エンジン特有の本物の音」、つまりモーターとトランスミッションが発する音を「高精度センサーで拾い、それを増幅してエレキギターのように周囲に放射」する独自の仕組みを開発したという。

そしてこのサウンドは、ドライバーにフィードバックを提供するという「機能的に有用な」ときのみ使用され、ドライバーがトルクを求めて行うアクセル操作やマニュアルモード時のパドルシフト操作に直接結びつけられ「ドライバーと車の間に対話とつながり」を生み出すとした。

なお、エレットリカは4輪それぞれに自社で設計・製造し、磁極の方向を最適化することによって特定の方向への磁場強度を最大化するハルバッハ配列ローターを備えた「電気エンジン」を搭載し、AWDで走行が可能だが、フロント側を切り離し、RWD走行とすることで電費効率を高めるられる。
ちなみにフェラーリと同じイタリアのアルファロメオは、小型SUV「ジュニア」のBEVバージョンを「ジュニア エレットリカ」という名前で販売している。このことが関係するのかどうかはわからないが、フェラーリの「エレットリカ」は最終決定された名称ではなく、2026年にこのBEVが発売されるときには違う名前になる可能性があるとのことだ。また車体のデザインも発売までには明らかになるはずだが、現時点では、4ドアで4座席以上を備えるとされるこのクルマは、おそらくフェラーリのSUV車種である「プロサングエ」と共通点が多くなると予想されている。
価格については、Reutersによれば少なくとも50万ユーロ(約8840万円)になる見込みと伝えている。これまで電動モデルに積極的ではないと言われて来たフェラーリだが、エレットリカでその評価を覆すことができるか、注目したいところだ。
ちなみに、フェラーリはすでに世界的なEV需要の減退を理由として、開発中のもう一車種のBEVの発売予定を2028年に延期している。