様子を見てみましょう

テスラ、4万ドル切るModel 3とYの「Standard」グレード発表。販売不振脱却のカンフル剤になるか

Munenori Taniguchi

Image:Tesla

テスラは、意味深な予告動画をSNSに投稿した翌日、Model 3とModel Yに新たに設定した「Standard」グレードを発表した。

大抵の場合、企業が発表時に大々的に宣伝するのは高級モデルや画期的な新機能を新発売するときだが、テスラが今回発表したのは外せる装備をあらかた取り払った、同社の下位モデル2車種だ。ちなみに、Model 3 Standardは3万6990ドル、Model Y Standardが約3万9990ドル。記事執筆時点の為替レートでは前者が約564万円、後者は約610万円となる。

Model 3 Standard(Image:Tesla)

新しい2つのクルマは、フル充電時の航続距離が推定321マイル(約520km)とされている。また、年内に発売される予定という、より高級なRWDおよびAWDモデルに比べて、当然ながら装備が簡素化されている。テスラが大々的に宣伝してきた先進運転支援システムの「Autopilot」もない(Autopilotに含まれていた交通状況認識型クルーズコントロールのみ搭載)。

Model Y Standard(Image:Tesla)

内装も後部座席のタッチスクリーンとシートヒーターはなくなり、ステアリングのポジション調整や、サイドミラーも手動式になった。車載オーディオシステムは上位モデルが15スピーカー+サブウーファーだったのが、7スピーカーシステムに変更された。

外装では、Model Yのフロントにあったライトバーが省略され、バンパーものっぺりとしたデザインになっているため、ひと目みればStandardだとわかってしまうのがなんとも寂しい。そしてガラスルーフの設定もない。

安価なグレードの追加が、電気自動車がほしいけどテスラには手が届かないといった顧客層の需要を掘り起こすのに役立つかといえば、それも微妙なところかもしれない。なぜなら、米国政府によるEVへの優遇税制措置が撤回される前は、Model 3が税額控除後価格3万4990ドル、Model Yは税額控除後3万7490ドルで販売されていたからだ。

つまり、これらのStandardモデルは優遇税制措置があった直近のModel 3とModel Yに搭載されていた装備が削ぎ落とされたうえに、価格がそれぞれ2000ドルも高くなったことになる。さらに言えばマスクCEOは、かつて同社製EVの最も安価となるモデルを2万5000ドルで発売すると主張していたが、すでにその言葉を忘れている模様だ。

報道によると、今回発表された2つの車種は欧州でも近日のうちに導入される予定とのこと。そちらでの販売が上向くようなら、実質的なコスト削減効果も見込まれて、販売不振から抜け出す足がかりになる可能性はなくもないだろう。

ただ、テスラは4月にCybertruckでも8万ドルから7万ドルに価格を下げたバージョンを出して売上増を図ったものの、ほとんど販売に貢献しないまま、5か月ほどで終息させた実績がある。このモデルでは、AWDからモーターを一つ取り外してRWDとなり、さらにアクティブエアサスペンション、電動トノカバー、荷台の電源コンセントなど、顧客が重要視するであろう装備まで取り除いてしまった。

米国のEV市場では、すでに日産の新型リーフが3万ドル以下で発表されている。シボレーの新型ボルトも3万ドル以下で登場すると言われており、そんななかで今回発表されたModel 3やModel Yを選ぶ人がどれぐらいいるのかは、しばらく経ってみてからでないとわからない。

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