バイブコーディングならぬバイブワーキング

マイクロソフト、ExcelやWordに「バイブワーキング」導入へ。Copilotにエージェント機能を追加

Munenori Taniguchi

Image:Microsoft

マイクロソフトは、OfficeアプリのエージェントモードとCopilotのOffice Agent機能を組み合わせ、Microsoft 365 Copilotに「バイブワーキング(vibe working)」を導入すると発表した。

最近は生成AIを駆使したコンピュータープログラムコーディング手法のことを「バイブコーディング」と言うが、バイブワーキングはそのOfficeバージョンということらしい。

マイクロソフトは「バイブコーディングがソフトウェア開発に変革をもたらしたのと同様に、Copilotの最新推論モデルはOffice作成物にエージェント的な生産性を解き放ちます」と説明している。

バイブワーキング、すなわち新機能の「エージェントモード」は、ExcelとWordにおける作業で利用できる。言ってしまえば、既存のCopilotによる作業をさらに推し進めたものであり、プロンプトだけで複雑なスプレッドシートや文書を生成できる新しいエージェントモードだと思えば良いだろう。

特にExcelでエージェントモードは、初心者にとってわかりにくく複雑な部分をより理解しやすいよう、計画と推論を用いて作業を分解し、OpenAIのGPT-5モデルによってドキュメント作成をステップごとにエージェントタスクとして実行するとのことだ。

マイクロソフトはこれまで、Excelに対してAIの要素を段階的に追加するアプローチを採用してきた。なぜなら、Excelが扱うデータは世界中の企業で特に重要な計算処理を支えているからだ。だが、Microsoft Office製品グループのコーポレートバイスプレジデントであるスミット・チャウハン氏は、エージェントモードを使うことで、監査、更新、検証が可能なシートを作成することが可能になると述べている。

マイクロソフトによると、Excelのエージェントモードは、AIモデルの実際のスプレッドシート編集能力を評価するベンチマークテストのSpreadsheetBenchで、57.2%の精度を達成したとのことだ。素人にはこれがどれほどの性能なのか解りにくいが、少なくとも数値的にはShortcut.aiやExcelをサポートするChatGPTエージェント、さらにはClaude Files Opus 4.1よりも高精度とのことだ。ただし、人間によるExcel作業精度の71.3%にはまだ及ばない。

一方、Wordにおけるエージェントモードは、文書作成をインタラクティブな会話形式で行うことが可能になるとチャウハン氏は述べている。まず、Copilotが作成する文書の下書きや修正点の提案を行い、文書作成において重要になる必須要素の明確化まで行うことが可能だという。

具体的には、企業の前月のデータを流用して月次レポートを作成し、今月データのハイライトと前月との差異まとめを生成するような使い方ができるとのことだ。チャウハン氏の説明によれば、「Copilotは作業の流れを途切れさせない提案を行うため、執筆作業が単なるタスクではなく対話のように感じられる」とのことだ。

また、新機能の「Officeエージェント」では、Copilotチャットを通じてOfficeアプリの外からOfficeドキュメントを生成することが可能になる。この機能ではAnthropicのモデルによりAIチャットから、たとえばPowerPointやWordのドキュメントを生成できる。

チャウハン氏は「PowerPointはプレゼン作成で最も使われるツールの一つだが、過去2年間、AIによるスライド作成はおよそ不十分だった」とし、Officeエージェント機能がそれを変えると宣言した。OfficeエージェントでのPowerPointドキュメント生成は、インターネットから情報を収集・推論し、スライドのプレビューをその場で提供するという。

そして、コード生成機能によってリクエストを実行し、さらに品質チェックまでも実施することで、すぐに共有できるプレゼンを作成する。その後も、Officeエージェントを使って「ビジュアルの微調整、書式設定の調整、コンテンツの修正」をしたり、PowerPointに引き継いでCopilotを通じて最終的な仕上げを施すことができるとのことだ。


ExcelおよびWord向けCopilotの「エージェントモード」は、Microsoft 365 Copilotの有料ユーザーまたはMicrosoft 365 Personal/Familyプランユーザーを対象にFrontierプログラムで提供が開始される。ExcelとWordのエージェントモデルはリリース時点ではWeb版のみの対応となるが、デスクトップ版へも近日中に提供するとのこと。「Officeエージェント」は米国でMicrosoft 365 CopilotユーザーまたはMicrosoft 365 Personal/Familyサブスクライバー向けにフロンティアプログラムで提供が開始される。

関連キーワード: