買収後も特に業務に変更なくゲームを作り続ける予定です

ゲーム大手EA、550億ドルの買収合意で非公開化へ。買い手はアラブマネーやトランプファミリーの投資ファンド

Munenori Taniguchi

Image:EA/Respawn

ヒット作に恵まれず苦境に立たされているゲーム大手のElectronic Arts(EA)は、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)およびシルバーレイク、アフィニティ・パートナーズなどで構成される投資家グループによって、約550億ドルで買収されることに合意したと発表した。ちなみにアフィニティ・パートナーズのジャレッド・クシュナーCEOは、ドナルド・トランプ氏の義理の息子としても知られている。

すでに、先週末にEAに提案された契約内容は報じられており、買収は秒読みとも言われていたが、週明け早々の発表となった。この取引は史上最大のレバレッジド・バイアウト(LBO)とされる。また、買収されるEAの株式は非公開化される予定で、上場企業としてのEAの歴史は25年で終わる。

ただ、株式を非公開化したところで企業活動まで終了するわけではない。今後もEAはこれまでどおりゲームの開発およびパブリッシングに携わっていくはずだ。

Image:EA / DICE

EAのアンドリュー・ウィルソンCEOは、リリース文で「EAの創造力と情熱にあふれたチームは、何億人ものファンに素晴らしい体験を提供し、世界で最も象徴的なIPのいくつかを構築し、私たちの事業に大きな価値を生み出してきた」と説明。「今後も、エンターテインメント、スポーツ、テクノロジーの境界を押し広げ、新たな可能性を開拓」し、「パートナーと共に、次世代をインスパイアする革新的な体験を創造していく」とした。ウィルソン氏は買収完了後もCEOに留まる。

Image:EA/Codemasters

PIFは2023年にEAの株式保有比率を引き上げていた。現在保有する9.9%の株式は継続保有される予定だ。なお、PIFは任天堂、テイクツー・インタラクティブ、Embracer Group、カプコンといった複数のゲーム会社の株式も保有している。

シルバーレイクのエゴン・ダーバン共同CEOは声明で、同グループはビデオゲーム会社に「多額の投資」を行い、「世界的な事業拡大」を支援していく計画だと述べた。同社は今後予定されている、米国版TikTokを米国が所有する新会社にスピンオフさせる取引にも加わっている。

Image:Electronic Arts

Electronic Artsといえば、1980年代にPCゲームの世界で頭角を現し、1990年代にはセガ、ついでソニーとの北米市場で協力したほか、ハリウッド映画の制作スタイルを参考にした、いくつもの開発会社を傘下に持つパブリッシャーとして成功をおさめてきた会社だ。特に『スター・ウォーズ』などの映画版権もののゲーム化、NBAやNFLなどのプロスポーツを扱ったゲームはシリーズ化によって大きな収益を生み出し、2000年代以降も『Mass Effect』『The Sims』『Titanfall』『Apex Legends』や『Battlefield』などのヒット作を放ってきた。

だが、近年は開発プロジェクトの中止が相次ぎ、今年の春には人気ゲームである『Apex Legends』『Star Wars Jedi』の開発チームにも人員削減の波が押し寄せていた。

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