ルーツがバラバラでもDNAがよく似ているのだそう

他人の空似、外見だけでなくDNAレベルでよく似ていたとの研究結果

Image:FrançoisBrunelle, Joshi, et al/Cell Reports

この広い世の中、どこか遠いところに、またはすぐ近くに、自分とそっくりな人が生活しているかもしれない…。そんな想像をしたことはあるだろうか。今年11月には世界人口が80億人を突破すると言われている現在、クローンかと思えるほどのそっくりさんがどこかにいる可能性はゼロではない。

そして最新の研究で、まるでドッペルゲンガーと言われるような非常によく似た容姿の人たちは、生まれも育ちもまったく異なる無関係なルーツを持っていても、多くの遺伝的変異などに共通点があることが判明したと報告された。この変異は見た目だけでなく、その人の生活のしかたすべてを形作っているようにも見える。

この研究の著者、マネル・エステラー氏は、スペインのバルセロナにあるジョセップ・カレラス白血病研究所の所長を務める人物。エステラー氏は2005年に、一卵性双生児はそれほど似通ってはいないことを示す研究を発表した。喫煙や年齢などの環境要因や行動要因が遺伝子の発現の仕方に変化をもたらし、一卵性双生児に顕著な違いとなって現れることがわかったといった内容だった。

そしてエステラー氏が新たにCell Reportsに発表した研究では、双子と言えば誰もが信じるほどよく似ているのにまったくの赤の他人の場合、遺伝子的にどうなっているのかを調べている。

研究チームはまず、長期にわたって世界中のそっくりな他人を探し出しては写真集を作る活動を続けているカナダのアーティスト、フランソワ・ブルネル氏に協力を仰ぎ、32組のそっくりな他人たちに連絡を取った。そして、その人たちのDNAや口腔細菌叢(マイクロバイオーム・フローラ)などを調べるために唾液のサンプルを採取し、分析する一方、身長と体重、血液型、環境、食事、人間関係などの身体情報やライフスタイルに関するアンケートをとった。

また3種類の顔認識アルゴリズムを用いて各ペアの客観的なそっくり度を調べ、すべてのアルゴリズムが同一人物と判定した16組を中心に、より詳しい分析を行ったという。

その結果、これらのそっくりさんペアは、いずれも最も一般的な遺伝的変異の”一塩基多型”と呼ばれるものを共有していたとのこと。そして16組中9組は、遺伝子的にも非常に似ており、スーパーそっくりさんだと言えた。だが、DNAの配列変化によらない遺伝子発現の制御伝達機構であるエピジェネティクスやマイクロバイオームについては、まったくと言って良いほど共通点が見当たらなかったとのことだ。

研究者は、赤の他人なのに非常によく似ている人たちは、まず遺伝子配列が非常に似ていることが外観のそっくり度につながっていると説明し、加えて、ふたりが受けた教育、身長や体重、喫煙歴などにも共通点がみられたと述べている。

研究者らは、ペアが互いに無意識のうちに深く関連した過去がないかを確認するのに戸惑ったという。ペアはだいたい同じ出身国で、自称の民族的背景もよく似ている傾向があった。しかし、同じ母集団からランダムにピックアップしたペアのほうが、互いの民族的な関連度は高かったとのことだ。今回の研究でも、過去数百年間で共通の祖先を持つ可能性があったのは1組だけで、まったく異なる大陸から集ったペアもあったという。

研究の出発点となった写真がモノクロであること、サンプルとなるペアの数も小さく、研究対象が欧州出身を中心とする点は注意を要するものの、今回の研究結果は、生物医学や、進化、法医学、そして外観からどのような病気になりやすいかなどといったいくつかの分野で、将来的になんらかの役に立つ可能性がありそうだ。

エステラー氏は「顔の特徴と行動パターンの間には関連性がある可能性があり、犯罪者の顔をDNAから再構築する法医学や遺伝子診断において、患者の顔写真が、その患者がどのゲノムを持っているかなどの手がかりを示してくれるかもしれない」とした。

ただし、スタンフォード大学生物医学倫理センターのポスドク研究員で、この研究には関与していないダフネ・マルシェンコ氏は「既存の顔アルゴリズムが、住宅ローン審査や求人、犯罪者のプロファイリングなどにおいて、既存の人種的偏見を強化するような傾向があることについて、これまでに多くの例を見てきた」とし、今回の発見を法医学に適用するのには注意を要するとNew York Timesに述べた。

エステラー氏は今後もプロジェクトを拡大し、より多くのペアを調べることでRNAの発現のしかたやプロテオーム(生体に発現するすべてのタンパク質のこと)など、その人の生活に影響を与える要因などを研究していきたいとしている。

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