2025年でも実現できていません

テスラのファン、マスクが2017年に実現と主張した「自動運転でアメリカ横断」に挑戦して初日に事故

Munenori Taniguchi

Image:Bearded Tesla Guy/YouTube

大のテスラファンで株主でもある2人組が、テスラのイーロン・マスク氏が当初は2017年に実現すると主張していた「自動運転でアメリカ横断」に挑戦したところ、スタートからの距離が100kmに満たないうちに路上に落ちていた障害物に衝突する事故を起こした。

2人は、最新バージョンであるv13.9にアップデートしたFSDソフトウェアを搭載するテスラ・Model Yに乗り込み、FSDを使用してアメリカ西海岸のカリフォルニア州サンディエゴから同東海岸のフロリダ州ジャクソンビルまで、ハンドルを握らずにドライブする挑戦を開始し、その旅程はすべて車載カメラで動画にする予定だった。

だが、全体の2.5%ほどを走ったところで、Model Yは突然、衝撃音とともに飛び跳ね、警告音を鳴らした。動画を見れば、ハイウェイの路上に金属でできたラダーレール(キャリアカーに自動車を乗せるときに使うスロープ)のような物体が落ちており、Model Yはそれを検知することなくノーブレーキで衝突しているのがわかる。あまりの衝撃に、助手席の搭乗者はシートから浮き上がり、手にしていたエナジードリンクが飛び散っていた。

会話の内容から、2人は最初、この障害物が先を行くクルマに跳ねられた動物の死骸かなにかに見えたようだ。運転席の搭乗者はFSDが自動的に回避すると思ったのか、衝突の直前までハンドルを握らなかった。事故後、2人はModel Yの破損状況を確認し、スタビライザーのブラケットが割れ、サスペンションのパーツに損傷があるのを確認したところで、この動画は終了する(続きの動画では修理を実施する様子が収録されている)。

もし、Model Yがドライバーの操縦なしに走行可能なレベル3以上の自動運転機能を備えていれば、それを使用して走行している最中に発生した事故の責任は自動車メーカー側にかかる。だが、現状のFSDはレベル2、つまり先進運転支援システム(ADAS)の域を出ない代物であるため、運転の責任はドライバーが負わなければならない。

2016年、イーロン・マスク氏は、「2017年にはすべてのテスラ車がニューヨークからロサンゼルスまで、ハンドルに一度も触れずに移動できるようになる」と述べた。それ以来ほぼ毎年、マスク氏は投資家に対してテスラ車が翌年までに完全自動運転を実現すると主張し、年末にその約束を綺麗さっぱり忘れるルーティーンを繰り返してきた。

その間、テスラはAutopilotの追加ソフトウェアパッケージであるFSD(Full Self-Driving)を、高いときは1万5000ドルで顧客に販売し、それが「完全な自動運転(Full Self-Driving)」を可能にすると顧客に説明・約束してきた。だが、2025年の現在に至っても、テスラはいまだに自動運転と呼べる機能を実現できていない。

そればかりか、テスラはすでに、2016年から2023年の間に生産されたすべての車両に搭載された自動運転用ハードウェアでは、約束どおりの完全自動運転を実現できないことを認めている。さらに、テスラは最近ウェブサイトにおけるFSDの表記をFull Self-Driving(Supervised)に改め、FSD(Supervised)の説明として小さく書き添えられている文章は、FSDがテスラ車の自律的な走行を実現するものではないと記述している。

こうした変更から、一部ではもはやテスラは完全自動運転機能を提供する気がないのではないかとの指摘もされるようになりつつある。

ちなみに、中国で販売されるテスラ車ではすでにFSDという呼び名は使われておらず、Intelligent Assisted Drivingという名称が使用されている。

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