ダッジのSUVから流用
グラフィックカードを自動車のATフルードにドブ漬け、最大16%のオーバークロック実現

PCの自作をひととおりマスターしたマニアが次に手を染めるサブジャンルのひとつが、CPUのオーバークロックだ。PC用CPUの多くは冷却クーラーが別売りであるため、通常の空冷ファンから冷却液の循環システムを備える水冷システムが一般的だ。
一方、PCケース内にあるもうひとつの大きな発熱源がGPUだが、こちらは専用のヒートシンクと冷却ファンが装備されていることが一般的で、ユーザーが手を付けられる部分はほとんどない。
しかし、RedditでTra5shL0rd(YouTubeチャンネル名はTrashBench)を名乗るオーバークロッカーは、PCのグラフィックカードを、自動車のATフルード(ATF)を使って冷却する実験を行い、7~16%の性能向上が図れたことを確認した。
ATFとはAutomatic Transmission Fluidの略、つまり自動車のオートマチックトランスミッション用の潤滑油剤兼冷却液のことだ。そして、この液体は高い絶縁性を持っている。
Tra5shL0rdは、PCのマザーボードからライザーケーブル(いわば延長ケーブル)を使用して引き出した、NVIDIA GeForce GTX 1080TiおよびGTX 1060搭載のグラフィックカードを、ATFを張ったタブにドブ漬けにして冷却する大胆な考えを実行した。
タブに張られたATFはポンプで外部の熱交換器に送られて冷却され、再びタブに戻ってくる。要するにバランス型風呂釜のようなからくりになっているわけだが、Tra5shL0rdは冷却液がATFであるためか、熱交換のためにダッジのSUV、ジャーニーのミッションオイルクーラーをそのまま使用した。
そして、GPUベンチマークを実行したところ、GTX 1060搭載のグラフィックカードは標準の1886MHzから2160MHzにまで、約16%ものオーバークロックで動作させることに成功した。一方、GTX 1080Tiのほうは約1960MHzの通常動作に対して、ATFでの冷却では2114MHzまでクロックを引き上げることができた。これは約7%の性能向上となる。
下位モデルであるGTX 1060のほうがGTX 1080 Tiより性能が高くなる逆転現象については、もともとGTX 1080 Tiが性能の上限に近いところで動作しているため、設計上の余裕が少ないことが理由として考えられる。
なお、Tra5shL0rdはこの実験に際して、ATFを提供したダッジに感謝の言葉を述べている。ただしダッジはATFのメーカーではなく、使用されたのはValvoline製のATFだった。
ちなみに、通常ならこうした電気製品を沈める液冷装置には、変圧器やコンデンサーの絶縁油である流動パラフィン(ミネラルオイル)が使われる。ただ、どちらを使用しても、ドブ漬けされたパーツの隅々まで液体が染みついてしまうため、元に戻そうとしてもその洗浄は非常に面倒な作業になるため、Tra5shL0rdは、この方法を真似することは勧めていない。
- Source: TrashBench(YouTube)
- via: Tom's Hardware