もしかして「Windows 95なんて使ったことない」人の方が多い?
世界を変えた「Windows 95」が発売30周年。今のPC、ネット界隈はどれぐらい良くなった?

1995年にローリング・ストーンズの「Start Me Up」に乗って颯爽とPCコンピューティング界隈に登場したWindows 95が、発売30周年を迎えた。
それまでに、すでにかなり洗練されたMacintosh OSが存在していたが、広く普及していたとは言えなかった。一方、ビジネス環境を中心に圧倒的なユーザーを抱えるIBM-PC互換機には、MS-DOSを拡張する格好でGUI環境を構築したWindows 3.1しかなかった。
そこへ、初めてマウス操作によるGUIデスクトップ環境を主体とした本格的なOSとして登場したのがWindows 95だ。ローリング・ストーンズの曲で印象的になったスタートボタンから、すべての操作ができるとアピールすることで、コンピューターオタクでない人々の心にあった敷居の高さを取り除くことに成功した。
また、画面下に表示されるタスクバーを見ればひと目で起動しているソフトウェアがわかるマルチタスク機能や、周辺機器や拡張パーツを接続するだけでそれを認識するプラグ&プレイ機能、ファイル名の文字数制限の大幅な緩和といった、ユーザーがスムーズにPCを使えるようにするための工夫が盛りだくさんであった。
それにもかかわらず、発売時のWindows 95のシステム要件が意外なほど低く抑えられたことも、一般ユーザーがPCを買おうと思うきっかけのひとつになったと考えられる(システム要件は、インテル386DXプロセッサーに4MB RAM、640×480px以上を表示可能なディスプレイ表示能力、インストール時に最低限必要な55MB以上の空き容量のHDD)。
当時、大容量のデータを扱えるCD-ROMが普及期に入ったことも、Windows 95の普及を後押しした。なにせこの当時最新のOSをフロッピーディスクでインストールしようとすれば、数時間かけて数十枚ものディスクをPCに出し入れする必要があった。それがCD-ROMなら1枚で済んだ(PC起動用にフロッピーディスクが1枚必要ではあったが)。
MS-DOS/Windows 3.1から飛躍的に扱いやすくなったWindows 95は、発売から1年で、全世界で4000万本を出荷したという。
その後、いまのFirefoxブラウザーのルーツとなるNetscape Navigatorや、マイクロソフト純正のブラウザーであるInternet Explorerが登場(当時は追加パッケージのMicrosoft Plus! for Windows 95に収録)し、インターネットプロバイダーが続々と現れたことが、さらにWindows 95の普及を加速していった。
なお、日本でWindows 95日本語版が発売されたのは、やや遅れて1995年11月だった。すでに海外の盛り上がりが伝わっていたこともあり、秋葉原などでは深夜0時からの発売開始にもかかわらず、大勢の人がPCショップや電機店の前に集まり、テレビでも報道されたのを思い出す人もいることだろう。当時はPCを持っていないのにWindows 95を買って帰ったという人もいたぐらいだ。
あれから30年が過ぎたいまのPC界隈は、ハードウェアの性能向上が長年続いてきた結果、かつてのPCとは比較にならないものとなっている。だが、ユーザー体験だけを考えれば、最近はサポート終了迫るWindows 10を使い続けているユーザーのデスクトップが時折そのWindowsにハイジャックされ、Windows 11への移行を迫るようになっている。
Windows 95で普及したインターネットブラウジングでは、ページを移動しようとリンクをクリックするたびに、やはり全画面を占領するように、特に欲しくもない商品やサービスをおすすめする広告が表示されるのが、もはや当たり前だ。
かつては文字情報しか扱えないパソコン通信だったネット上の他の人々とのコミュニケーションは、SNSやYouTubeといったサービスへと変貌したが、アルゴリズムによって偏った情報ばかりをおすすめされた結果、陰謀論や誤情報、フェイク画像/動画の波に飲み込まれてしまう人も増えたように思える。
一方で、NetflixやSpotifyなど、動画・音楽といったサブスクリプション形式のサービスが登場し、エンターテインメント方面は大きく手軽に楽しめるようになった。毎年のように月額料金が値上げされるのを除けば、便利になったと思っている人が多いのではないだろうか。
様々な出来事があった30年を経て、PCやインターネットがどれほど人々の生活を豊かにしたか否かは、その人自身がそれらをどのように使いこなし、タイムリーに手に入るようになった情報をどのように受け入れ、また受け流してきたのかで大きく変わるかもしれない。もはや、スマートフォンがあればPCはいらないという人もいるだろう。
心躍ったWindows 95のパッケージの、窓の向こうに見える青空はいまも青く晴れわたっているだろうか。
- Coverage: Tom's Hardware