市民科学者が生成

こんな木星見たことない。ウェッブ望遠鏡が捕らえた木星のオーロラや環

Image:NASA, ESA, Jupiter ERS Team; image processing by Judy Schmidt

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の新しい画像は、遠い宇宙ではなく太陽系最大の惑星、木星だ。JWSTはまだ本稼働して日が浅いが、すでにいくつかの印象的な仕事をこなしている。今回の木星も、木星の極域のオーロラを非常に詳細に示し、これまでの木星とは違う星のようだ。

この2枚の画像は、JWSTが備えるNIRCamと称する近赤外線カメラを使い、異なるフィルターで撮影した複数の画像を合成して仕上げられている。特に広視野の画像では、大きく左の端に第5衛星アマルテアが、うっすら見える木星の環には第15衛星アドラステアがいる。われわれの知っている木星は赤茶けた縞模様のガス惑星で、大赤斑が特徴だが、今回の画像がそうではないのは、JWSTが赤外線でものを見ているからだ。

カリフォルニア大学バークレー校名誉教授で惑星天文学者のImke de Pater氏とパリ天文台のThierry Fouchet教授は、JWSTでの木星観測について「正直、ここまでの成果が得られるとは期待もしていなかった」と述べた。

Image:NASA, ESA, Jupiter ERS Team; image processing by Judy Schmidt

もう1枚のクローズアップ画像では、3種類のフィルターを使って極域のオーロラを際立たせるとともに、多数の明るく白い「点」や「縞」が、凝縮した対流による嵐の非常に高高度な雲の頂を示しているとのことだ。

通常、JWSTが撮影した画像データは、ボルチモアにある宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)が担当しているが、今回の画像はカリフォルニア州モデストで活動する市民科学者のJudy Schmidt氏が処理、合成したものだ。また広視野画像のほうはスペイン・バスク大学の研究者Ricardo Hueso氏が共同で作業した。

JWSTやその他の撮影データは一般に公開されており、必要な処理を施すことができれば誰でも画像として “現像” できる。Schmidt氏は10年以上前、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した最初の画像を処理したこともあるのだそうだ。

もちろんJWSTは、ただ美しく見える画像を取得するために打ち上げられたのではない。今回の画像も、太陽系の惑星における大きな明るい天体と、そのまわりの暗い天体の撮影などでJWSTの能力を示すために取得された。JWSTは今後、「木星の雲の層、気流、大気組成、オーロラの活動、および温度分布や構造」を研究し、木星の衛星であるイオやガニメデについても、その表面や大気について観測する予定とのことだ。

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