まるで地球のような青空

「最もクリアな火星パノラマ写真」NASAが公開。パーサヴィアランスが撮影した86枚を合成

Munenori Taniguchi

Image:NASA, JPL-Caltech, ASU, MSSS

NASAの火星探査車Perseverance(パーサヴィアランス)は2021年から火星の大地で生命の痕跡を探し、一方で将来の火星サンプルリターンのための土壌サンプルをパッケージングしたり、火星ヘリコプターの飛行を見守ったりしてきた。

その間には、様々な火星の地上からの景色を撮影し、地球に送信してきている。8月7日、NASAのパーサヴィアランスチームは、赤い惑星での澄み切った空と大地の対比が印象的な、86枚もの画像をつなぎ合わせて作ったパノラマ写真を公開した。

Image:NASA, JPL-Caltech, ASU, MSSS

この写真は、火星のFalbreen(ファルブリーン)と呼ばれる場所で撮影された。我々が考える火星の空は大体、その大地と同様にオレンジ色に染まってみえる。だが今回公開された写真では、地球の空と見まごうばかりの青空がひろがっており、その地表もより(地球における)ナチュラルな色彩であるように見える。

それもそのはず、この写真は空と地形の違いを際立たせ、地形のコントラストをより鮮明にするために、色調を調整しているのだという。そのため、同時に公開された未加工の色彩の写真では、やはり赤茶けた火星の姿が確認できる。

Image:NASA, JPL-Caltech, ASU, MSSS

NASAは、色彩とコントラストを調整した写真によって際だったこの地表の特徴として、写真中央から右寄りにある暗い三日月形の砂の波紋の上に浮かんでいるように見える大きな岩石に注目した。NASAいわく、地質学者はこのタイプの岩石を「float rock(浮遊岩)」と呼び、もともとはどこか別の場所で形成された岩が、地滑りや風、水流など、未解明の何らかの現象によって、この場所まで運ばれてきたと推測しているとのことだ。

またこの地域は、パーサヴィアランスがこれまでに調査した中で、最も古い地形のひとつである可能性が高い。画像の中央左、やや下寄りに見える明るい白い円状の模様は、地形を調べるためにパーサヴィアランスが岩石表面を削った跡だ。拡大してみるとわかりやすいが、岩石の表面が円形に浅くくりぬかれているのがわかる。

2021年から火星の調査を続けるパーサヴィアランスは、これまでに約36kmを移動してきたが、その活動は一貫して着陸地点が含まれる直径45kmのジェゼロクレーター内部で行われている。このクレーターは約35億年前には川が流れ込み、微生物に適した環境が存在した可能性が高いと考えられている。その予測どおり、パーサヴィアランスはこの場所がかつては有機物で満たされた湖だったことを示唆する証拠もこれまでに発見している。

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