CEOの中国との関わりを突いています
トランプ大統領がインテルCEOに退任要求、株価下落に拍車

米国のトランプ大統領は木曜日の朝、自身が所有するSNS、Truth Socialに「インテルのCEOは深刻な葛藤を抱えており、直ちに辞任すべきだ。この問題には他に解決策はない」と投稿した。
インテルのCEOには今年3月から、リップ・ブー・タン氏が就いている。同CEOはインテル取締役だった昨年までに、肥大化した同社が官僚主義的になり、受託生産に対する姿勢や、リスクを嫌う余りAI時代の波に乗り遅れるなどの失態を重ねたことに警鐘を鳴らしていた。
そして、いくつかの半導体開発プロジェクトでAMDに比べて最大5倍にもなる人員を投入しては意志決定が遅くなることの是正や、幾層にも重なる中間管理職の人員整理を提案。だが取締役会やゲルシンガーCEO(当時)が聞き入れず、さらには現場を中心に全従業員の15%削減を発表したことが引き金になり、いったんはインテルから身を引いていた。
しかし、その後もインテルが不振から立ち直ることはなく、昨年12月にゲルシンガーCEOが退任。インテルは、世界中の企業から同社のCEOに適する人物を探すとしたものの、収益は低下し、半導体開発も低迷。赤字が続き、多額の負債を抱えるインテルの経営を引き受けようという人物は現れなかった。しばらく後継者探しを続けた後、取締役会で改革を訴えたタン氏をCEOとして呼び戻すに至った。
タン氏はインテルに加わる前、半導体開発用ソフトウエアを主力とするCadence Design SystemsのCEOを務め、収益を倍増させ、株価を3200%も上昇させた実績を持つ。また、2020~2022年にはソフトバンクの社外取締役も務めていたので、当時からその名前を知っている人もいるかもしれない。
CEOとしてインテルに復帰したタン氏は、以前に提案していた中間管理層の問題に着手。無駄な承認手続きなど情報の滞留をなくし、出遅れたAI分野に注力して新規顧客の開拓と半導体製造受託事業復興を目指している。
ただ、これらの改革は即効性よりも着実な進捗が中心となる。そのため、いつも風向きを気にする投資家らが、地道ながらも歩みが遅くみえるインテルを待ち続けられるか疑問の声も上がっていた。
今回のトランプ氏の発言はインテル株価下落を招いており、タン氏にとって面倒な問題が追加されたといえる。トランプ氏の発言は、その前日にアーカンソー州選出の上院議員トム・コットン氏がインテルに送った書簡のなかで、中国系マレーシア人であるタンCEOの、過去のキャリアにおける中国政府や中国軍との疑惑を質問したことがきっかけのようだ。
タン氏が2021年までCEOだったCadence Design Systemsについても、今年7月に、必要なライセンスを得ないまま中国の国防科技大学にハードウェアとソフトウェアを販売し、米国の輸出規制に違反したとされ、同社はその罪を認めている。
タン氏がCEOに就任してからのインテルは、官僚主義と管理階層の削減を打ち出し、直近となる7月の業績報告で売上高が予想を上回ったと報告した。一方で、ドイツとポーランドで計画していた新工場建設をとりやめ、非中核子会社の売却を進めるなど新たな支出削減策を打ち出し、エンジニアリング重視のベンチャー企業への回帰を目指している。
また、インテルがバイデン政権のCHIPS法案の主要部分としてアリゾナ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、オレゴン州の各施設で製造およびパッケージングプロジェクトを立ち上げるために約80億ドルを約束したうち、市場の需要と大口顧客の確保具合によっては、オハイオ州での最先端チップ工場の建設ペースを緩める考えも示している。
ちなみに、トランプ大統領が特定の企業に対して、経営に口出しをするのは今回に限ったことではない、そのため、アップルやOpenAI、NVIDIA、Amazonといった巨大企業のCEOらは、自身のビジネスに関する方針への理解を促すために、トランプ氏を訪問して会談の機会を設けるなどしている。
- Source: CNBC
- via: Gizmodo TechCrunch The Verge