しかしハードウェアは黒字に転換

Xbox Series X|Sの販売台数は「PS5の3分の1」か

多根清史

Image: Natanael Ginting/Shutterstock.com

マイクロソフトはXbox Series X|Sの販売台数を公表していない。だが、著名リーカーが3000万台未満にとどまっていると報告している。この情報は、信頼性の高いAMD関連のリーカーであるKeplerL2氏が、AMDが公開しているゲーム向けチップの出荷データをもとに推計したものだ。

AMDのチップを採用している主要なゲーム企業は、マイクロソフト、ソニー、Valveの3社である。このうちソニーとValveは、PS5およびSteam Deckの販売台数を公表している。それらの実績を差し引くことで、おおよそのXboxの販売規模が逆算できるわけだ。

なお、AMDのセミカスタム事業部(SCBU)にはSteam Deck向けのチップも含まれており、同部門は主にゲーム機向けを中心としたカスタム半導体の開発・製造・販売を担っている。すなわち、Steam DeckはゲーミングPCではなく「ゲーム専用機」として扱われていることになる。

ただし、AMDが発表する出荷台数には、まだ組み立てられていないチップや流通在庫の分も含まれており、メーカーが公表する「実際に消費者へ販売された本体台数」とは若干のズレがある。そのため、KeplerL2氏は「現世代ゲーム機の合計が1億台を超えている」「PS5が約7500万台」「Steam Deckが約400万台」との数値から、Xbox Series X|Sは2100万台〜2900万台と推計している。

この推計が正確であれば、PS5のインストールベースはXbox Series X|Sの約3倍に達する可能性がある。低価格帯のSeries Sを投入したものの、販売減少に歯止めをかけるには不十分であったと見られる。

もっとも、近年のXbox Series X|Sは利益が出ている可能性が高いとKeplerL2氏は述べている。これは、部品コストの低下や本体価格の引き上げ、Series Xにおけるダイシュリンク(半導体の微細化)による生産コスト削減の結果だという。

一方で、PS5標準モデルはかつて黒字化していたが、部品コストの上昇により再び赤字に転落し、現在はPS5 Proのみが黒字を出しているとのことだ。

こうした状況から見えてくるのは、ソニーがいまだに原価割れを許容してでもゲーム機のシェア拡大を目指しているのに対し、マイクロソフトはハードウェア販売そのものにはこだわらず、Xboxをあくまでエコシステムの一部と位置づけている点である。

マイクロソフトにとっての収益の主軸は、Xbox Game Passに代表されるサブスクリプションサービスや、他社プラットフォームへのソフト展開に移っているようだ。

「損をしてまでハードを売るつもりはない」という戦略が、次世代Xboxにおいても継続されるのか、あるいは転換されるのかは注目したいところだ。

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