プロセッサーのようにAIチャットボットも自社開発に置き換え?

アップルが“ChatGPT級”検索体験を目指す「Answers」チームを結成か

多根清史

Image:Piotr Swat/Shutterstock.com

アップルが新たに「Answers, Knowledge, and Information(AKI)」チームを結成し、ChatGPTに対抗する独自のAIチャットボットの開発を進めていると米Bloombergが報じている。

実際、アップルの米国および中国における求人サイトには、このAnswersチーム向けの求人が10件以上掲載されている。たとえば、「Siriのパーソナル領域に関する質問応答能力の向上」を担う機械学習エンジニアの募集もある。求人要項には、このチームが「個人ドキュメントを活用して質問に回答する大規模言語モデルの開発」を行い、「プライバシーを最優先とする」と明記されている。

このAnswersプロジェクトは、表面的には2026年に延期された「パーソナライズされたSiri」(ユーザーの個人的なコンテクストやアプリの画面情報を理解して応答する機能)と酷似している。しかしBloombergのMark Gurman記者によれば、背後にはさらに深い戦略的背景があるという。

Answersチームは現在、ウェブをクロールし一般的な知識に基づいて質問に答える「回答エンジン」の開発初期段階にあるとされている。将来的にはこの技術を単体アプリとして提供するほか、SiriやSpotlight、Safariなど既存のアップルサービスの検索バックエンドとして統合する構想もあるとのことだ。

なお、アップルはすでにiOS 18においてChatGPTとの統合を果たしており、将来的にはGoogle Geminiを含む複数の生成AIサービスの選択肢も提供される可能性があるとみられる。では、なぜアップルが独自のAIチャットボットを開発する必要があるのか。

Gurman氏は、その背景には米国の反トラスト法裁判によるGoogle検索エンジン契約の先行き不透明さ、生成AIによる検索市場の再編、そしてアップルが一貫して掲げてきた「個人データ重視・プライバシー重視」の方針があると説明している。

Gurman氏は以前、アップルが会話型Siriを開発していると報道。当初はiOS 26で搭載を予定していたものの、実際にはiOS 27まで延期されたと報じていた。開発自体はかなり以前から始まっていたが、決して順調ではないようだ。

これまでアップルは、他社に依存していたプロセッサーやモデムチップなどの主要コンポーネントを自社設計に切り替えてきた。その流れは、いずれAIチャットボットの領域にも及ぶことになりそうだ。

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