GeForce GTX 1060に比べてVRAM多め
“Linuxの父”リーナス・トーバルズ、今もメインPCに「Radeon RX 580」使用

「Linuxの父」として知られるリーナス・トーバルズ氏は、2025年の現在もなお、メインで使用するデスクトップPCは2017年製のAMD Radeon RX 580 GPU搭載マシンであることがTom’s Hardwareによって伝えられている。
AMD Polarisアーキテクチャーは、Radeon RX 400シリーズで初めて採用され、当時は省電力性能とコスト面で大きなメリットを発揮した。とはいえ、初めて市場に登場したのが2016年であるため、日進月歩のGPU業界にあってはもはや遠い昔の技術といって差し支えないだろう。
ただ、オープンソースソフトウェアの世界では、古い技術は決して陳腐な技術ではない。特にGPUのような移り変わりの激しいコンポーネントを動かすドライバーを開発するには、メーカーのサポートに加え、一定以上のノウハウの蓄積が必要となる。そのため、最新GPUよりもある程度枯れた製品のほうが安定して動作することが多い。
トーバルズ氏がRX 580を使い続けているのも、ノスタルジーや何かのこだわりというよりは、Linuxシステムにおける実用性、長期的なサポート、そして必要以上の複雑さがないという現実的な選択の結果と言えるかもしれない。
登場から10年にならんとするGPUを、トーバルズ氏が今も使い続けていることが明らかになったのはLinux カーネルバージョン6.17で発生したブラックスクリーン問題をトーバルズ氏自身が解決し、報告したことだった。この問題はAMDのディスプレイストリーム圧縮(DSC)に関するバグが原因だったのだが、トーバルズ氏はカーネルの進捗を維持するためにパッチを一時的にロールバックさせた。
このときに、Linuxカーネルメーリングリスト(LKML)への報告で「…相変わらずの退屈なRadeon RX 580だ」と綴っていた。とはいえ、Linuxではこの問題の修正とともに、Radeon RX 580で最新の5K ASUS ProArtモニターを快適に駆動できるようになった。このことは、オープンソースドライバーの進歩がとまらないことを証明する例のひとつと言えそうだ。
さすがに、最新のWindowsゲームをRadeon RX 580でプレイするのは難しくなりつつある昨今だが、それでも、Linuxカーネルのコンパイルをするには必要十分な性能がある。トーバルズ氏は数年前にLinuxカーネルのコンパイル作業を高速化するために、Intel製CPUからAMD Threadripperに切り変えている。素人目にはThreadripperにRadeon RX 580は力不足なのではという気もするが、使用している本人が十分なパフォーマンスを感じていれば、それ以上の性能を追求することはそれほど重要ではないのだろう。
なお、トーバルズ氏は近年、Arm64向けのLinuxカーネルの開発に注力しており、特にAppleシリコン搭載のMacBook Airを使用してArm64 Linuxカーネルのコンパイルを行っていたが、これもAmpere製Arm CPU搭載マシンに切り替わったとTom’s Hardwareは伝えている。
余談だが、AMDのライバルで、GPUメーカーとして絶大なる地位を手にしているNVIDIAは、伝統的にオープンソースドライバーの開発にあまり協力的でなく、2012年にはトーバルズ氏に公の場で中指を立てられ「これまでに関わったなかで最低の企業だ」とこき下ろされた一件があまりに有名だ。
そして、そのNVIDIAは日本時間今朝、Radeon RX 580と同時期に発売したGPU製品、GeForce GTX 7xx、9xx、10xxシリーズ(Maxwell、Pascal、Voltaアーキテクチャー)に対応するWindows 10 Game Readyドライバーの提供を、今年10月のリリースをもって終えることを発表した(セキュリティパッチは2028年まで継続)。
もしかしたら、これらのGPUカードをLinuxシステムで使い続けようと思っている人もいるかもしれない。だが、これらのカードは2024年にリリースされたオープンソースのNVIDIAドライバーではサポートされていないので注意が必要だ(プロプライエタリードライバーはある)。
- Source: Tom's Hardware Phoronix
- Coverage: The Verge