新たなマルチタスク機能の使い心地とは
iPadはMac代わりになるか? iPadOS 26パブリックベータ、検証で判明「Macとの重要な違い」

アップルがiPadのための次期OS「iPadOS 26」をこの秋にリリースする。7月25日に公開されたパブリックベータを試しながら、iPadOS 26の誕生によってiPadがMacBookの代わりになるのか検証した。
iPad向けの新しいiPadOS 26は6月にアップルが開催した世界開発者会議「WWDC 25」で発表され、パブリックベータテストを経て秋の正式公開を予定する。その頃には、iPadの新製品も発売されるのか楽しみだ。
なおパブリックベータの画面の写真、およびキャプチャ画像を一般に公開することは禁じられているが、本稿では取材に基づき、許可を得たうえで掲載している。パブリックベータ版のOSは対応デバイスに無料で導入できるが、諸注意事項をApple Beta Software Programのページから確認したうえで試してほしい。
iPadOS 26に対応するiPadは、以下の画像に記載がある。Apple Intelligenceに関わるiPadOS 26の新機能は、Apple Intelligenceのために設計されたApple Mシリーズのチップを搭載するiPad ProとiPad Air、またはA17 Proチップを搭載するiPad miniだけが使える。

macOSに迫るマルチタスクの快適操作を実現
iPadOSがiPhone向けのiOSから独立して誕生したのは、2019年にリリースされたiPadOS 13からだ。その前にアップル純正のiPad向けキーボードが商品化され、2020年3月にはiPadOS 13.4がマウスやトラックパッドなど、外部のBluetoothに対応する入力デバイスを正式にサポートした。
トラックパッドを搭載するアップル純正の「Magic Keyboard for iPad Pro」が2020年に商品化されてから、iPadをMacBookとして、あるいはノートパソコンとして使いたいというユーザーのニーズはますます高まっている。iPadOSにはSplit ViewやSlide Over、ステージマネージャのようなiPadによるマルチタスクを快適にする機能が出揃い、外部ストレージなど周辺機器への対応も拡張した。

iPadOS 26の重要なテーマの1つが、モバイルパソコンとしてiPadの進化をさらに押し進めることであるのは明らかだ。筆者もパブリックベータを試用しながら、あらためてこのことを強く実感した。
先に筆者の正直な手応えを伝えると、iPadOS 26が使えるiPadは、MacBookの代わりになり得ると思う。ウィンドウシステムのマルチタスク対応が、もはやmacOSとほぼ同等の使い勝手に到達したからだ。
iPadOS 26ではアプリを起動後、ウィンドウの右下端をつかんだまま左上に向かってポインタを動かせばウィンドウが独立する。同じ手順でほかのアプリも切り離せば、iPadの画面に複数のウィンドウが並ぶ。移動やサイズ変更も自由自在だ。

アプリウィンドウの左上側にはmacOSと同じ、ウィンドウを閉じたり、フルスクリーンや最小化表示に切り替える3色のアイコンが並んでいる。このウィンドウコントロールを長押しすると、ウィンドウをタイル表示にして均等3分割・4分割に切り替えられる。
iPadの本体ストレージやiCloudに保存したファイルの管理に役立つOS標準の「ファイル」アプリも、ウィンドウシステムの進化に伴って使いやすくなる。たとえば、iPhoneなどで撮影した写真を「ファイル」アプリのフォルダに保存し、サムネイル一覧を確認しながら「プレビュー」アプリで写真を手早くサイズ変更できる。
iPadOSに初めて登場する純正「プレビュー」のおかげで、写真とテキストによるレポートをまとめて入稿する筆者の日常の仕事がiPadだけでこなせそうだ。

iPadOS 18と同様、アプリのウィンドウ間でドラッグ&ドロップ操作による、ファイルのコピーとペーストもできる。たとえば「ファイル」アプリで選んだ写真をメールやMicrosoft Wordのファイルに貼り付けられる。
同じくiPadOS 26では、iPadOS 18に引き続き、macOSとほぼ同じキーボードショートカットが使える。開いているウィンドウをCommand+Wで閉じたり、Command+Hで隠す操作などが例に挙げられる。アプリウィンドウが独立することで、ドラッグ&ドロップやキーボードショートカットを使う頻度が高まると思う。

Macとの違いは「デスクトップ」の概念
iPadOS 26は完全にmacOSと同じになるわけではない。iPadをMacBookのように使いこなすためには、いくつかの工夫を凝らさなければならない。

MacBookやWindows系モバイルパソコンのユーザーは、iPadOS 26にも「デスクトップ」というワークスペースの概念がないことが、引き続きiPadへの移行を阻むボトルネックになりそうだ。
iPadOSのホーム画面はアプリのアイコン、あるいはウィジェットを配置するための場所であり、ファイルやフォルダが置けない。「ファイル」アプリから任意のファイルを選択して、ホーム画面やDockに配置したアプリのアイコンにドラッグ&ドロップして開くことも基本的にはできない。
だが、iPadOS 26から「ファイル」アプリで作成したフォルダがDockに配置できるようにはなった。よく使うファイルはフォルダに分類してからDockに放り込んでおくと、アクセスの高速化が図れるだろう。


iPadはMacBookに比べるとデジタルインターフェースが少ない。アップル純正のMagic Keyboardを装着すれば、電源はキーボード側から給電できるものの、それでもフリーになるUSB-C端子は1個だけだ。SDカードリーダーやストレージなど、複数の周辺機器を同時に接続する場合はiPadで使えるUSBハブが別途ほしい。USB接続のDAC内蔵ヘッドホンアンプやUSBイヤホンなどは、音質や安定感を重視するのであればiPadの端子に直接挿して使いたい。
さらに、Apple Vision Proを「Mac仮想ディスプレイ」として使えるデバイスは当然ながらMacだけだ。iPadに接続してARスマートグラスを仮想の外部ディスプレイとして使えるものもある。筆者が試したところ、DisplayPort Altモードが使用可能なUSB-C端子を持つデバイスに対応するARグラス「XREAL One Pro」「XREAL One」が、M3搭載iPad Air、M4搭載iPad Proに対応していた。
一方で、むしろiPadの方がモバイルワークステーションとしてMacBookに勝ると感じる部分もある。たとえば、現行モデルのiPadはすべての機種が5G対応のセルラーモデルが選べるし、高精細な写真と動画が撮れるリアカメラを搭載している。
そのため、SNSサービスとの相性はiPadの方が良さそうだ。何よりiPadは入力デバイスとしてApple Pencilが使えるので、作業スペースを移動しながらイラストを描いたり、大学の講義をノートにとったり、手書きによるクリエイティブワークの可能性も広がるところにiPadならではの魅力がある。

やはり画面の大きなiPadがおすすめ
iPadOS 26の進化を最も引き出せる現行のiPadはどのモデルだろうか。
マルチタスクに最適化されたウィンドウシステムや、Apple Pencilによるクリエイティブワークにも活かすことを考えれば、迷わず13インチの大きなiPadを選びたい。
Apple Intelligence対応の将来性を踏まえて、なおかつセルラー+Wi-Fiモデルによる機動力を足して「コスパも重視」するのであれば、AppleシリコンのMチップを搭載する13インチのiPad Airがおすすめだ。本体のカバーケースも兼ねるMagic Keyboardは、ぜひ手に入れて一緒に使いたいアイテムだ。
とはいえ、iPad AirにキーボードやApple Pencil Proを一式揃えると出費もそれなりの金額になり、MacBook Airを買う方が安上がりになりかねない。それはそれで「MacBookの優位性」であるとも言える。
Apple Intelligenceには非対応になるが、ドキュメントの作成、メールやWebのチェックなどシンプルな用途を中心に、iPadをノートパソコンのように使い倒したい場合はベーシックな「A16搭載iPad」という選ぶ手もある。同機はiPadOS 26にも対応している。セルラー+Wi-Fiモデルを選んで、Magic Keyboard Folioを足した価格は127,600円(税込)からだ。
または秋以降、Apple Intelligenceにも対応するベーシックなiPadが誕生すれば、価格次第ではベストな選択肢になる。MacBookにとっても大きなライバルに成り得るiPadを、アップルが投入する決断を下せるのか。秋以降の発表に注目したい。