米国の内外から政府資料にアクセスしやすく

インターネット・アーカイブ、米連邦政府図書館に正式指定

多根清史

Image:Wirestock Creators/Shutterstock.com

米上院は、インターネット・アーカイブに連邦政府の公的図書館(Federal Depository Library)としての資格を与えた。これにより、同団体は1100以上ある米国連邦政府図書館ネットワークの一員となり、一般市民が政府文書に幅広くアクセスできるようになる。

この認定は、カリフォルニア州の上院議員アレックス・パディラ氏から公式の書簡により行われた。同議員はインターネット・アーカイブを「デジタルファーストの取り組みが現代的な連邦政府図書館に最適だ」と評価している。

連邦政府図書館制度(Federal Depository Library Program)は1813年に設立され、予算書、規制集、大統領文書、経済報告、国勢調査データなど、政府資料への市民アクセス支援を目的としている。議員1人当たり最大2つの図書館を指定でき、インターネット・アーカイブも政府資料へのアクセスが改善される見通しである。

インターネット・アーカイブの創設者ブリュースター・ケール氏は「このプログラムに参加することで資料の発信源により近づき、確実かつ効率的にインターネット・アーカイブや提携図書館の利用者に提供できる」と述べている。また、同団体が持つデジタル保存技術を他の図書館へ広げることにも期待が寄せられている。

具体的には、従来は物理的に各図書館に配布または一部のみオンライン化されていた政府資料が、インターネット・アーカイブを通じて容易かつ包括的に利用可能になる。その恩恵は米国市民だけでなく、同サイトにアクセスできる米国外の一般ユーザーにも及ぶ可能性がある(著作権やアクセス制限で閲覧できない資料もあり得るが)。

さらに、これは訴訟問題が相次いでいたインターネット・アーカイブにとって朗報である。同団体は2023年に大手出版社に敗訴し、50万冊以上のタイトル削除を命じられていた。ほか、音楽保存プロジェクト「Great 78 Project」(1898年〜1950年代の78回転SPレコードをデジタル変換して一般公開)について大手音楽レーベルから提訴され、敗訴すれば7億ドル以上の損害賠償を抱え、閉鎖を余儀なくされる可能性もある

今回の指定は法的問題を直接解決するものではないが、同サイトの公共性や重要性が改めて確認された形である。

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