ロッキード・マーティンは過去の火星探査や小惑星サンプルリターンに関わっています

予算削減で瀕死の「NASA火星サンプルリターン計画」、民間のミッションが救う可能性

Munenori Taniguchi

Image:Lockheed Martin

NASA(とESA)は長年にわたり、火星探査計画の一環として赤い大地から地表の土壌や岩石など持ち帰るマーズ・サンプル・リターン(MSR)計画を推進してきた。

すでに、火星では探査ローバーのPerseverance(パーサヴィアランス)が、リターン用サンプルが入った30の容器を地面の上に配置しており、そのサンプルには、火星に生命が存在した証拠が含まれる可能性が期待されている。計画では、NASAは2028年にミッションを開始し、それらのサンプルを2030年代半ばに地球に帰還させることを目指していた。

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しかし、この計画はプロジェクト全体で80億~110億ドルもの費用がかかるとされ、さらに開始当初に必要とされた予算額を大幅に超過してしまっている。

そのため、NASAは安価かつ簡素化した代替案を検討してきたが、トランプ政権が打ち出した大胆な予算削減案では、この計画全体の存続すらも危惧されるようになった。

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NASAにとっては幸いなことに、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の仲違いなどにより、⁠MSR計画は⁠中止を免れたように見える。だがそれでも、安価に火星からサンプルを持ち帰る方法を見つけ出さなければ窮地を脱したとは言い切れない。

そんな状況のなか、ロッキード・マーティンは既存のサービスと宇宙船を利用することで、このミッション遂行する方法を少なくともひとつ発見したと発表した。ロッキード・マーティンいわく、主要な宇宙船とシステムの運用を効率化することで、リスク管理や監視作業の負担を軽減し、ミッションの総コストを大幅に削減できるのだという。

従来どおりにミッションを進めようとすれば、NASAは約70億ドルの予算が必要になる。だが同社は、この提案には、すでに実績のあるInSight探査機を使った小型着陸機をはじめ、いずれも小型ながら、火星からのサンプルリターンのニーズに合わせた火星離脱用宇宙船や、地球大気圏再突入システムなどが含まれているとし、必要な費用は約30億ドル未満に圧縮されるという。

Image:Lockheed Martin

もし、ロッキード・マーティンが言うようなコストでMSRのミッションを再び軌道に乗せることができるなら、それはNASAにとって非常に有効な支援になる可能性がある。

もちろん、NASAがロッキード・マーティンと協力しようとするならば、まず米国政府がその提案を支持し、協力体制を構築する必要があるのだが、ここへ来てトランプ大統領をはじめとする人々は、人類を火星に送り込むことに再び重点を置き始めている。

将来の火星への着陸や有人探査を実現するには、到着した飛行士たちが生き延び、生活のためのインフラを整備するための重要な情報として、事前にその場所に関するデータを少しでも多く集めておきたいところだ。

Image:Lockheed Martin

ちなみに、ロッキード・マーティンには過去22回の火星探査ミッションを支援し、MRO、MAVEN、2001 Mars Odysseyといった探査機の開発や運用も担当している。さらには小惑星ベンヌからの、NASA初の小惑星サンプルリターンでも、OSIRIS-REx探査機とその回収カプセルの設計・開発に携わってきた実績がある。

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