AIはエネルギーを消費します
米国の13州で電気料金が20%値上げへ。原因はAI強化学習で急増する電力需要

AIブームの激化により、米国では大小さまざまな企業が独自のAIモデルを強化学習させるのに躍起になっている。しかし、そのためには大量のGPUの処理能力が必要となり、消費される電力も莫大なものになってきた。結果、米国では電気料金の高騰が深刻化している。
米国エネルギー情報局(EIA)の統計によると、2020年以降、米国では物価のインフレを上回る率で電気価格が高くなっている。Reutersによると、米国最大の電力会社で、米国北東部の13州で事業展開しているPJM Interconnectionは、今年の夏以降、電気料金を20%以上も引き上げる予定だ。
PJMのサービスエリア内でも特に電力状況が深刻なのはペンシルベニア州で、企業向けの電力料金が29%も高騰している。同州の知事はPJMに対して価格引き下げを要求し、それができなければ州とPJMの契約を取り消すと警告した。
PJMにとって、この時期の電力需要急増は最悪のタイミングだ。なぜなら、(PJMは否定しているが)2022年以降、再生可能エネルギー発電事業の新規申請が急増し、送電網への接続前により多くの技術的監査が必要になったため、新設された発電所の送電網への接続が遅れているからだ。
2023年にChatGPTが登場してAI人気に火が付くと、大手IT企業はこぞってデータセンターを増設し、その電源確保のために電力網オークションで巨額入札合戦を繰り広げるようになった。PJMも、2024年のオークションでは発電所の入札単価が前年比800%の増加になっていた。
今年もオークションの時期が迫っており、価格はさらに上昇すると予想される。これにより、ペンシルベニア州を含むPJMのサービスエリア全域で、今夏は消費者向けエネルギー価格が20%上昇すると予測されている。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、ChatGPTに代表されるAIチャットボットによる電力消費は、Google検索の約10倍に達すると述べ、ユーザーがついついかけてしまいがちな「ありがとう」や「お願いします」といった何気ない一言への返答でも、OpenAIにとっては数千万ドルの出費につながると述べた。
ちなみに、2024年のChatGPTの1日あたりの電力消費は米国の一般家庭18万世帯分に相当するとのことだ。ChatGPTだけでなく、その他のAIチャットボットも、まだまだユーザー層を拡大し続けている。
- Source: Reuters
- via: Tom's Hardware PCMag
- Coverage: EIA