空席のNASA長官は運輸省長官が兼任することに
NASA、2000人以上の上級職員を削減へ。トランプ政権による予算カットにより

米航空宇宙局(NASA)はトランプ政権による予算削減案により、上級職員2145人が人員整理の圧力を受けて退職する予定だ。
「NASAは、より優先順位の高い予算の中で仕事をしながらも、我々のミッションに全力を尽くしている」とNASAの広報担当者ベサニー・スティーブンス氏は述べている。
ここ数か月、NASAの予算はトランプ政権の下で新たな長官すら決まらないまま、将来がはっきりしない状況が続いていた。先月、億万長者の民間宇宙飛行士でありイーロン・マスク氏とも親しいジャレッド・アイザックマン氏が、NASA長官候補から外されたことで、状況は複雑化していた。
なお、トランプ大統領は先ほど、運輸長官のショーン・ダフィー氏にNASA長官を暫定的に兼任させることを発表した。
大統領は自身が所有するSNSに「ショーンはアメリカの運輸問題を扱う上で大きな仕事をこなしてきた。彼はたとえ短期間であってもこれまで以上に重要になっている宇宙機関の素晴らしいリーダーになるだろう」と述べた。
ただ、暫定的にとはいえ運輸長官がNASA長官を兼任するというのは前例のないことだ。そのうえ、宇宙飛行士を再び月に送り込み、最終的には人類史上初めて火星に着陸させることを目指しているNASAにとって重要な時期に、また2000人を超える上級職員を失おうとしているそのときに、一時的にNASAの指揮を執ることになる。
今回の人員削減報道に対して、カリフォルニア工科大学/IPACの研究科学者で、NASA太陽系外惑星科学研究所の主任科学者でもあるジェシー・クリスチャンセン博士は、Independent紙に対し、上級職員を失えば「NASAの全センターに深い知識と専門知識の穴が開き、NASAの戦略計画全体に影響が出る」と述べた。
さらにクリスチャンセン博士は「われわれは、一度失われた制度的知識を再構築することがいかに難しいかについて、月への帰還計画という直接的かつ直接的な先例に学んだ。われわれは、いまだに60年前の能力を取り戻そうとしている最中だ」とし、かつての月探査計画のノウハウを持つ人々が早期に退職し去ってしまうことが、いかに損失であるかを警告している。
NASAはIndependent氏に対し、「より優先順位の高い予算内で」任務に引き続き尽力するとコメントした。
ちなみに、トランプ政権で二刀流を演じるのはダフィー氏が初めてではない。マルコ・ルビオ氏は国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官代行を兼任し、さらには米国立公文書記録管理局(National Archives and Records Administration)の長官代行も務めている。