積みゲーは恥じゃない

Steamユーザーの「積みゲー」がインディーゲーム業界を支えているとのアナリスト分析

多根清史

Image:Nwz/Shutterstock.com

PCゲーム販売プラットフォームSteamのユーザーは、一般的に「積みゲー」の本数が多いとされている。これはゲームを購入したものの一度もプレイせずに放置している状態を、未開封のパッケージソフトが積み上がる様子になぞらえた表現である。

こうした「積みゲー」の実態と、ゲーマーの消費行動について、著名なアナリストが分析を行い、特にインディーゲーム開発者に向けて「過度に心配する必要はない」とアドバイスを送っている。

ゲームマーケティングのアナリストであり、コンサルタント、さらにインディー開発者でもあるChris Zukowski氏は、「あなたのゲームを購入するほとんどの人は、実際にはプレイしない」と題したブログ記事を公開した。同氏はGDCなどの国際ゲーム開発カンファレンスでも登壇しており、Steamを中心とした市場分析に定評がある。

Zukowski氏によれば、Steamのユーザーは「熱心なホビイスト」が多く、ゲームを「遊ぶため」ではなく「集めること自体」に喜びを見出す傾向があるという。NetflixやFortnite、そして睡眠までもが可処分時間を奪い合う現代において、Steamゲームの購入行動はまったく別の文脈にあるようだ。

このような「積みゲー」は、英語圏では「pile of shame(恥の山)」と呼ばれている。つまり、購入したにもかかわらず手をつけずに積み上がっていく未消化コンテンツの山である。この概念はレゴ、ウォーハンマー、編み物など、他の趣味にも共通しているとして、日本語の「積ん読(つんどく)」も紹介されている。

数年前の調査では、Steamユーザーの所持タイトルのうち、中央値で約51.5%が未プレイというデータも存在した。また、新作ゲームの体験版を集めたイベント「Steam Next Fest」においても、ユーザーが多くのゲームをウィッシュリストに登録する一方で、無料デモさえ試さないという傾向が明らかになっている。

それでも、Zukowski氏は「無料デモはユーザーの “コレクション欲” を満たすために重要である」と述べている。仮にユーザーが「実際に遊ぶ予定のあるゲームしか購入しない」となれば、Steamでの売上ははるかに少なくなるはずだ。「買ったけど遊ばない」はSteamにおいては “普通のこと” であり、むしろこの行動こそがゲーム業界全体の売上を支えている、という見方である。

これらの考察は、売れたゲームがプレイされないことに悩むインディー開発者への励ましでもあるが、同時にSteamユーザーにとっても心に響く内容だ。「積みゲー」に対してどこか後ろめたさを感じていた人も、それがインディーゲーム業界への貢献となっているとすれば、少し誇らしい気持ちになれるだろう。

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