意味のあるBotアカウントもあるし…

TwitterにBotが多いとのマスク氏主張、根拠のツール作者が「無意味」とバッサリ

Image:kirill_makarov/shutterstock.com

Twitterの買収契約を一方的に撤回しようとして訴えられている大富豪イーロン・マスク氏は、買収取りやめの理由として、サービス全体に存在する、Bot(ボット)と呼ばれるスパムやフェイクアカウントの数が過少に報告されているとの主張を繰り返している。

Twitterはこの主張に対して、Twitter内のすべてのアカウントの様子を調べることができる「Firehose」と呼ばれるツールへのアクセスをマスク氏に与えた。しかしマスク氏はこれを使うことなく、8月5日に公開されたTwitterへの反訴に関する書類のなかで、第三者が開発した、Botmeterと呼ばれるアカウント診断ツールを使用した。プラットフォーム上に見えているアカウントの実に33%がスパム・フェイクアカウントだと推定、さらに1日あたりのアクティブユーザーの最低でも1割がBotだと主張した。

ところがこれに対して異論を唱える人物が、Twitterの弁護チーム以外から現れた。ほかでもない、Botmeterの作者であるKaicheng Yang氏だ。Yang氏は、マスク氏陣営が主張するBotmeterの数字には「何の意味もない」とバッサリ切り捨てている。Yang氏はBotmeterを使用することに関してマスク氏側との接触はなかったと述べ、さらにその仕組みについて説明している。

説明によると、Botmeterはアカウントがいつ、どれぐらいの頻度でツイートしているかを調べ、さらに投稿内容や、その他いくつかの指標から5段階評価で、それが人間でないアカウントかを診断する。なお5段階の基準はスコアが低いほど人間のアカウントと推定され、スコアが高いほどBotの可能性が高まるというものだ。ただ、Yang氏に言わせれば、たとえスコアが”5”だったとしても、それがBotだと決めつけることはできないという。

Yang氏はBotの「普及率を推定しようというのなら、スコアをカットする基準値を設ける必要がある」という。例として、基準値を3とするのと2に決めるのとでは、Botと診断される人の数が変わってしまうとのことだ。

そして、マスク氏らは設定基準値をいくつにしたら33%という数字になったのかを示していない。つまりマスク氏らは、Botmeterを使用したとしつつも、Botと判定した数を自由に設定できてしまうため、Yang氏からすればその数字は「何の意味もない」とのことだ。

別のBot判定ツール「Tweet Bot or Not」の開発者は、Twitter上のスパムや偽アカウントの数は、定義によって大きく変わってしまうとBBCに述べている。何を基準にするか、どう定義するかでBotの数は大きく変動し、1%未満から20%まで幅広い判断結果が出るとした。そして「厳密に定義すれば、かなり低い数字になると思う。実際に存在するBotアカウントから、大量にツイートしているなどの特徴を考慮しなければならない」と述べている。

一方でBotの中にも、人々の役に立つように作られている物も多々ある。たとえば天気予報を定期的にツイートするBotは対象となる地域に住む人たちに有用だと言えるし、地震速報も然りだ。機械的な集計では、こうした自動化アカウントもBotとしてひとくくりにされてしまわないだろうか。

Twitterは、フェイクアカウントの割合を調べるのに、主に人力による調査方法を用いているという。四半期ごとに無作為に抽出した数千のアカウントをしらみ潰しに眺め、フェイクかどうかを判断し集計しているという。さらにTwitterはこうした判断基準の他にIPアドレス、電話番号、位置情報といったプライベートデータも判断に使っている。そうした手間暇をかけてBotの数を集計しているTwiiterから見れば、Botmeterのアプローチは「極めて限定的」であり、信頼性は低いという考えだ。

もちろんTwitterも、Bot検出には自動化されたツールを用いていると述べており、1日に100万件以上が抽出され、Botとわかったアカウントは削除しているという。たくさんのアカウントがすり抜けて残っていることも認めているが、1日あたり2億1700万人のアクティブユーザーのうち、ボットアカウントの占める割合は比較的少ないという。

マスク氏の弁護団は、反訴の中で、TwitterはBot活動を推定するため、もっと高度な技術を使うべきだとしている。また、ボットの推定値を独自にチェックするための十分なユーザーデータをTwitter社が提供していないとも述べている。しかしYang氏は、Twitterの手法は比較的堅実だと思われるとし、もし自分がデータを持っているのなら、アカウントの検証にはおそらくTwitterと同じような処理をするだろうとした。

ただしYang氏は、Twitter側にも、もっとBotの特徴を明確に定義するなど、できることはあると、一部マスク氏側の考えにも賛同。「合意を得ようとするなら、双方が一緒にひとつひとつアカウントを判定することが重要だ」とした。

Twitterとマスク氏の、「買え」「買わない」の争いについての審理は、デラウエア州衝平法裁判所で、10月17日から5日間の予定で行われる。

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