特に初期型モデルで多いとのこと
PS5、液体金属の劣化で“冷却不良”の報告増加。勝手にシャットダウンも

PlayStation 5(PS5)の全モデルでは、APU(メインプロセッサー)の冷却効率を高めるため、従来のサーマルペーストの代わりに液体金属が採用されている。この液体金属は主にガリウム、インジウム、スズなどの合金で構成されており、高性能を安定して維持するうえで重要な役割を果たしてきた。
しかし数年前から、この液体金属が「漏れ出す可能性がある」というリスクが一部で指摘されていた。そして現在、そのリスクが現実化し、PS5の故障事例が増えているとの報告が開発者やユーザーから相次いでいる。
Alderon Gamesの創設者であるMatthew Cassells氏は、テクノロジーポッドキャスト「Moore’s Law is Dead – Broken Silicon」の最新エピソードに出演し、PS5を縦置きにした場合、重力の影響で液体金属が片寄ったり漏れ出したりしやすくなると述べた。その結果、APUとヒートシンクの間に「ドライスポット(乾いた部分)」が発生し、冷却効率が著しく低下。これにより過熱や突然のシャットダウンが引き起こされるケースが多いという。
この症状は特に発売初期のモデルで多く見られるとされ、横置きに変更することである程度の緩和は可能だが、すでに劣化が進行している個体では改善が見込めないとのこと。こうした不具合は、グラフィック負荷の高いゲームで特に顕著に現れるとされており、『Call of Duty』や『Spider-Man 2』、そしてAlderon Gamesの開発する『Path of Titans』などで、長時間プレイ中に15〜30分ほどでシャットダウンが発生する例が報告されている。
Alderon Gamesによれば、『Path of Titans』の最新アップデート直後から、PS5の電源が突然落ちるという報告を複数受けており、全体の2〜3%のプレイヤーがこの問題を経験しているとのことだ。他タイトルでも同様の事例が寄せられており、特に発売から2年以上経過した本体で多い傾向にあるという。
この問題は数年前から注目されており、修理専門のYouTubeチャンネル「Tronics Fix」でも、液体金属の経年劣化がPS5故障の原因であると指摘されていた。ただし、ソニーの内部シール構造は非常に堅牢に設計されており、落下や衝撃などがない限り、液体金属が基板まで漏れ出す可能性は「極めて低い」と結論づけている。それでも、旧モデルではドライスポットの存在が確認されており、縦置き使用を避けるよう注意喚起がなされていた。
なお、改良型のPS5 Slim(Blu-rayドライブ外付けモデル)およびPS5 Proでは、ヒートシンク構造が見直されており、液体金属の漏出リスクが軽減されていることが報告されている。完全な解決には至っていないものの、構造的な改善は進んでいるとみられる。
とはいえ、旧型モデルほどリスクが高く、ほとんどがすでにメーカー保証期間を過ぎているため、修理には高額な費用が発生する可能性がある。たとえば、PS5のメイン基板交換には税込3万6300円がかかる。
Cassells氏はこの問題についてソニーと直接やり取りを行い、「無償修理プログラムの導入が必要である」と提案したという。実現するかどうかは不明だが、ユーザーとしては以下のような予防措置を講じておくべきだろう。
- 横置きの徹底:縦置き使用を避け、水平設置で液体金属の偏りを防止
- 定期的な清掃:ほこりによる冷却効率低下を防ぐため、吸気口やファンのメンテナンスを推奨
- 異常時の対応:過熱や頻繁なシャットダウンが起きた場合は自己修理せず、メーカーまたは専門業者に相談する
- Source: Moore Law Is Dead Broken Silicon(YouTube)
- via: Wccftech