いつでもどこでも “自分の設定” を呼び出せるように

ScanSnapの最上位スキャナー「iX2500」。新SoCで読み取り速度も画質も全面強化

編集部:平山洸太

「ScanSnap iX2500」

PFUは、イメージスキャナー “ScanSnap” シリーズの新モデル「ScanSnap iX2500」を6月24日に発売する。価格はオープンだが、同社オンラインストアでは税込59,400円で販売する。

ScanSnapシリーズの新たなフラグシップとして、デザインを一新させつつ、機能も全面的にアップグレードした新モデル。デザインは光と影のコントラストを活かし、陰翳礼讃をコンセプトに取り入れている。カラーは白と黒の2色。

“個人で使うスキャナ” という概念を広げて「時・場所・デバイスの垣根を超えて、いつでもどこでもMy ScanSnapとして使える」をコンセプトとしており、本機が置いてある場所であれば、アプリから自分の設定を呼び出して使えるようになっている。

いつでもどこでも自分の設定に

これまでスキャン設定を保存したプロファイルは、各スキャナーごとに保持する仕組みをとっていたが、本モデルでは、スキャナーでなくPCやスマートフォンといったデバイス側に保存するように変更している。

これによってデバイス側からスキャナーにプロファイルを流し込むことができるようになり、“接続すればいつもと同じプロファイル” が再現されるという。流し込んだプロファイルは保存しておくことも可能だが、不特定多数のユーザーで共有することも想定し、接続解除時に自動的にプロファイルを削除する設定も用意。プロファイルは合計100個まで読み込み・保存が行える(従来は30個まで)。

タッチパネルが大型化され、前機種「iX1600」の4.3インチから5.0インチに拡大。合わせて感圧式から静電容量方式のタッチパネルに変更となり、スマートフォンのような操作感で各種プロファイルや設定の変更が行えるようになっている。Scanボタンが物理ボタンとして復活し、その分ディスプレイ表示も広く使えるようになった。

ディスプレイを大型化しつつ、静電容量式に変更。Scanボタンは物理ボタンとして復活

タッチパネルからの操作で、PCやスマートフォンを使わずに、本体から直接クラウドに保存したりメールに送信したりといった事が可能。また、秋ごろのアップデートで同一ネットワーク内に保存してあるNASに直接保存できる機能も追加予定となる。

スマートフォンとの接続は、Wi-Fi 6およびBluetoothに対応。後のアップデートで追加予定となるが、スマートフォンを本体に近づけることで接続できる機能も用意する。Bluetoothはセットアップにおける活用を想定し、Bluetoothでスマートフォンとペアリング後、接続しているアクセスポイントのパスワードを入力するだけで設定可能。情報のやり取り自体はWi-Fiを使って行う。USB接続での設定とデータ送受信も行える。

スマホアプリの画面

SoCは同社が業務用スキャナー向けに自社開発した「iiGA」を搭載することで、スキャン速度の向上、起動速度の向上、画質の向上を実現。スキャン速度は毎分45枚(A4カラー両面/300dpi)となっている。一方で従来と同じ消費電力を維持し、高速化しつつも省電力を両立させているという。スキャン速度向上に合わせて、1度にセットできる枚数は50枚から100枚に倍増させた。

自社開発SoC「iiGA」

なお、iX1600に搭載されていた「GI」プロセッサーは、2012年発売の「iX500」から継続して使われ続けてきたもの。今回タッチパネルが静電容量式に変更されたのも、iiGA搭載によって可能になっているそうだ。

左上が従来の「GI」プロセッサー

また、SoCが強化されたことで、向き補正や縦筋軽減といった処理機能もスキャナー側で実施できるように。将来的にはPDFを保存する際に、検索可能なOCRをかけてから保存できるようにしたいという。業務用スキャナーに搭載されているクリアイメージキャプチャにも新たに対応。色ズレやモアレを軽減する画像処理を行うことで、より高画質なスキャンが可能になったと説明する。

基礎となるスキャナーの仕様についてもアップグレードし、紙を送る機構であるエンジンを刷新。原稿保護の機能も新搭載し、業務用スキャナーから技術転用した、斜めになった原稿を検知して止める機能を搭載。従来からの超音波に寄る重検知機能も引き続き備える。

エンジンも刷新

なお、どこでも自分でスキャンできる環境を広げるべく「ScanSnap Spot 協力パートナー」の募集を開始する。設置箇所は1000か所をまずは目指し、1〜2年のスパンで2000か所に倍増していきたいとのこと。コワーキングスペースやカフェだけでなく、ショッピングモールといった公共の場所にも設置を進めていきたいとしている。

専用ソフトウェア「ScanSnap Home」も強化

iX2500の登場に合わせて、ScanSnapシリーズ用の専用ソフトウェア「ScanSnap Home」もアップデート。まずはPC向けとモバイル向けに更新を行い、Chrome OS/Chromebook対応は秋ごろの予定としている。iX2500だけでなく、既存の対応スキャナーでも新機能は利用可能だ。

アップデートでは、スキャン後にどこに保存するか、どういったサービスに連携するかを選べるクイックメニューがリニューアル。クラウドサービスに送ることができるほか、Microsoft Teams、SharePoint、OneNoteが新たに追加されている。

リニューアルされたクイックメニュー

クイックメニューは “初めてのユーザーの最初のステップ” という位置づけに変更され、初期設定はクイックメニューとフォルダ保存の2種類に。クイックメニューで何ができるのか、どういったサービスと連携できるのかを把握したうえで、プロファイルで自分好みの設定にしていくことを想定している。

加えて、クイックメニューでよく利用するサービスの傾向から、そのプロファイルを作らないかとサジェストするなど、学習していく仕組みも備えている。なお、これまでは複数のプロファイルが用意されていたが、初心者は迷ってしまう一方で、慣れているユーザーは初期設定のものを削除するところから始まるなど、ユーザーの利用実態が変更の大きな理由だとしている。

Teams等との連携については、新たに導入した「ドラッグ&ドロップウィンドウ」で行う。これはポップアップで表示される読み取ったファイルに対し、エクスプローラーやFinderと同じようにドラッグ&ドロップできるというシンプルなもの。あえてプリセットを作らないことで、都度別のユーザーにファイル送信を送ることができる。また、Slackやメールなどにもドラッグ&ドロップできるため、汎用的に使用することが可能。

ドラッグ&ドロップウィンドウ

モバイル版でも複数のプロファイルが作成できるようになる。名刺などのプロファイルを作ることで、名刺から認識した名前や電話番号などをメタ情報として保存して使うこともできる。また、アプリ上からPDFにOCRをかけることも可能になる。

今後のアップデートとして、複数のデバイスでScanSnap Homeのスキャンデータを同期する仕組みも予定している。別途Googleドライブ等クラウドサービスの連携が必要とのことだが、複数のスマートフォンやPCのどれからでも同じデータを見ることができるようになる。

スキャナーは “AI進化のための鍵”

発表会では同社取締役 常務執行役員の宮内康範氏が登壇。iX2500の登場によって「新たなステージに踏み出す」と延べ、「まさに進化の形の第一歩であると確信している」と意気込む。AIの爆速的な進化がある一方、 “世にある良質なAIの学習データ” が早くて2026年、遅くても2028年には枯渇するという課題があるという。学習データがなければAIの進化が止まってしまう。その対策として、「AIの進化の鍵はリアルなアナログ情報にある」と考えているとのこと。

ScanSnapは「AIのための情報」としてのスキャンも考えていく

宮内氏は、アナログ情報で代表的な “紙” を学習データに変換していくことにビジネスチャンスがあると分析し、PFUとして「紙を電子化して情報をAIが活用できる構造化データに変換していくこと」を目指していくという。そういったことを踏まえ、新製品ではスキャン品質をさらに強化し、加えてどんな場所でもどんなワークスタイルでも紙を電子化できる、ということを追求してきたそうだ。

また、同社代表取締役 社長執行役員の平原英治氏は、現在同社スキャナーはWi-Fi接続に対応するなど「IoTのエッジデバイスとしても進化してきている」と説明。新製品によって現実とデジタルの垣根をなくすことを推進していくことで「DXをさらに加速し、ライフスタイル、ワークスタイル、そこに新しい価値を提供し続けること」を目指すとした。

同社代表取締役 社長執行役員 平原英治氏(右)、同社取締役 常務執行役員 宮内康範氏(左)

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