ものすごく頭が良い人なら、後光が見える?
人の脳は常に変化する光を放っていることが判明。ただその詳細は謎

カナダ・オンタリオ州にあるアルゴマ大学の生物学者ヘイリー・ケイシー氏が率いる研究チームは、人間の脳がその活動に応じて常に変化する光を放っていることを発見した。
われわれの住む地球には、自ら発光する生物がいることを、多くの人が知っている。これは生物発光と呼ばれる現象だ。だが、一般的に光っていないと思われていても、肉眼では確認できないほど、非常に微弱な光を発光している生物もいる。この、生物による微弱な発光は「バイオフォトン(生物光子)」現象と呼ばれている。
いまから100年以上前の1922年に、ウクライナ・タヴリダ国立大学の研究者アレクサンダー・ギュルヴィッチによって発見されたバイオフォトン現象は、翌1923年にいくつかの研究論文として発表されている。そして現在では、人間の身体も、肉眼では確認できないほど弱いものの、可視光にあたる周波数の光を発していることがわかっている。
ちなみに、宇宙空間に存在する、絶対零度よりも高い温度を持つすべてのものは、熱放射と呼ばれる赤外線を放射している。だが、今回の研究で調べたバイオフォトンは、熱放射とは異なり、近可視光線から可視光線の波長帯で放射されている。
人間の脳内におけるバイオフォトンは、エネルギーを生成する生体分子反応の副産物であると考えられている。そしてアルゴマ大学の研究チームは、この脳内における微弱な発光を調べ、その光と活動の関係性について調べた。
脳の微弱な発光を調べるといっても、暗い場所でボランティアの頭を開き、暗視カメラで脳を眺めるような調べ方はできない。研究者らはまず、ボランティアを暗室に座らせ、頭に脳波を測定するEEGキャップを装着させて脳活動をモニターした。さらに頭部の周囲から、光電子増倍管と呼ばれる非常に高感度な光検出器を用いて、安静時と音声で提示される課題を解いている最中の、脳からの光放出を測定した。

こうして得られた光の測定値を、背景放射線(宇宙線、地中の放射性物質、体内由来の放射線など日常的に測定されるもの)と分けることで、バイオフォトン現象がいろいろな脳活動レベルと一致するパターンを示すかどうかを調べた。
その結果、研究チームは脳からのバイオフォトンが参加者の頭の外からでも測定可能であること。その出力とEEGキャップで記録された活動との間に明確な相関関係があることも確認できたとのことだ。なお、生きた脳から発生する光子の量は、ペトリ皿の上でわずかな量の細胞を調べた場合に比べると、はるかに大きいこともわかったと研究チームは説明した。
この研究では、脳の活動と発せられる光には、相関関係があることがわかった。だが、まだまだバイオフォトンが脳活動や細胞間コミュニケーションにおいてどのような役割を果たしているかはわかっていない。
研究者らは、「今回の研究は、相対的な信号強度が非常に低いにもかかわらず、暗い環境において人間の脳から得られる超微弱光子(UPE)の信号パターンが背景からの光信号と区別できることの概念実証だ」と考えているとし、今後の研究では、単に脳の活動中と休息中いう2つの状態だけでなく、さまざまな脳活動がUPEのパターンにどう現れてくるのかを詳しく調べることを考えているとした。
- Source: iScience(Cell.com)
- via: Scientific American BGR