ついに始まった?

「AIが人の仕事を奪う」に現実味。米Amazon、AI活用で従業員を削減していくとのCEO発言

Munenori Taniguchi

Image:Skorzewiak/Shutterstock.com

米Amazonのアンディ・ジャシーCEOは6月16日、従業員に対して今後数年間でAIの採用を拡大し、人員削減が進むことを警告。「もっとAIに関心を持つ」よう促した。

近年、生成AIの普及により、AIが人々の雇用を奪う可能性を懸念する声が上がっている。だが、多くの企業はAIのメリットを享受しつつも、それが必ずしも雇用喪失に繋がるとは言ってこなかった。ジャシーCEOの今回の従業員宛のメッセージは「AIが人の仕事を奪う」可能性に現実味を持たせるものになりそうだ。

ジャシーCEOは、AIの活用が「効率性の向上」をもたらすことを期待しており、結果として「現在行われている一部の仕事を担う人材は減り、他の一部の種類の仕事を担当する人材が増えるだろう」と曖昧に述べつつ、要するに「今後数年間で、会社全体でAIを広範囲に活用することで、効率性が向上し、全社規模で従業員数が減少すると予想している」とした。

生成AIブームの先駆けとなったChatGPTなどは、いくつかの指示を組み合わせた命令文を与えることで、求めに応じた文章や画像などを生成する能力をもつ。そのため、書類作成をはじめとする初歩的な事務作業は人からAIへの移行がしやすいと考えられている。

5月、有力なAIベンチャー企業のひとつAnthropicのダリオ・アモデイCEOは「AI技術によって初級レベルのホワイトカラー職の半分が消滅する可能性がある」と述べた。GoogleでAI研究を行い2024年にノーベル物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントン氏は、高性能なAIがロボットに搭載され「これまで人間でなければできなかった知的労働をこなすようになれば、人間の労働者はロボットにはできない仕事こなすため、かなりの熟練度を身につける必要が出てくる」とした。

Amazonは2024年末時点で、全世界で150万人を雇用している。これは大手小売り企業のウォルマートに次ぐ、米国第2位の雇用規模だという。その多くは物流倉庫における労働者だが、約35万人はオフィスに勤務している。

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