5年間で約2.6倍に
成長を続けるアップルのApp Store経済圏、2024年の売上は1.3兆ドルに到達

ボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネスのエコノミスト、アンドレイ・フラドキン氏と米Analysis Groupのジェシカ・バーレー博士が共同で実施した、App Store経済圏に関する最新の研究レポートが公開された。報告によると、2024年に世界のデベロッパがApp Storeを通じて売上げた総額が1.3兆ドル(約201兆円)に到達したという。
2020年に同じくAnalysis Groupの独立系エコノミストが実施した調査で報告された5000億ドルと比べて、約2.6倍に及ぶ売上げにまで、5年間で伸長したことになる。
アップルはApp Storeを通じて発生した売上げ総額のうち9割以上が、アプリやサービスを開発する外部デベロッパに還元されていることを強調している。
5年間に飛躍したオンラインコマースとフードデリバリー
2020年以降の5年間は、世界的にコロナ禍が社会・経済に大きな影響を及ぼした時期と重なる。今回のレポートは2019年以降にデジタル商品を扱うサービス、実態を伴うフィジカルな商品を扱うサービス、そしてアプリ内広告という3つのカテゴリーでユーザーの支出が拡大したと分析している。とりわけオンラインコマースやフードデリバリーといったフィジカルな商品を扱うアプリの成長が顕著だったようだ。
日本国内でもUber Eatsや出前館といったいわゆる “出前アプリ” をはじめ、飲食専門店によるモバイルアプリを活用するサービスが急速に普及した。コロナ禍により、この時期に人々の生活スタイルが大きく変わったことが背景にあると考えられる。
余談だが、筆者が5月末に訪れたアラブ首長国連邦(UAE)の大都市ドバイでも、地元発のスーパーアプリである「Careem(カリーム)」によるフードデリバリーサービスが人々の生活に定着していた。気温が35度を超える猛暑のなかで、外出を避けながらランチタイムの食事を楽しむ地元のビジネスパーソン、あるいは観光客に広く利用されているようだ。
デジタル分野ではコンテンツ制作やエンターテインメント、仕事の生産性向上、さらには柔軟な働き方を支援するアプリやサービスも人気を集めている。リモートワークの定着がこうしたカテゴリに属するアプリとサービスの需要を押し上げたものと考えられる。
日本市場の独自性も見えてきた
2024年版のApp Store経済圏調査によれば、1.3兆ドルという総売上のうち、日本市場からは約470億ドル(約7兆3500億円)が生まれているという。全体の構成比としては4〜7%に相当する。大きな額ではあるものの、北米市場の売上は全体の約30%を占めている。
日本のモバイルコマース市場は依然として小規模であると捉えることもできるが、App Store経済圏の中で見ると、日本市場ではフィジカル商品を扱うアプリとサービスが特に好調であり、全体の50%以上を占めているという。要因のひとつにはオンラインストアやクーポン、ポイントシステムなどを含むリテール系アプリの好調があるようだ。
今回の研究レポートが伝えている情報はここまでになるが、人気のアプリやユーザーの消費活動について傾向をさらに掘り下げることができれば、App Storeを通じて日本発の個性的なアプリやサービスを世界に届ける後押しにもなるかもしれない。
5月下旬にはアップルが「App Storeの安全性」を伝えるプレス発表を行った。2020年からの5年間にApp Store上で総額90億ドルを超える不正取引がブロックされ、ユーザーに被害を及ぼすことを防いだという報道内容だ。2024年の単年だけでも不正取引と見なされた取引を20億ドル以上阻止してきた伝えている。
“安全なApp Store” が実現されている背景には、ストアに公開されるアプリやアップデートが、最先端のテクノロジーを駆使した自動プロセスと、アップルのApp Reviewチームのメンバーによる “人の手” の厳格な審査を経て提供されていることが大きな理由として挙げられる。
6月9日(米国時間)にApple本社で開催される世界開発者会議「WWDC25」では、AppStoreに関連する開発者向けの新しい機能やツールの発表もあるかもしれない。