ChatGPTとどっちが人の役に立つ?
14歳の開発者、数秒間で心臓病を検出するアプリ「Circadian AI」を開発

14歳の開発者シッダールト・ナンディヤラ氏は、心血管疾患の初期症状を数秒で特定するとうたうアプリ「Circadian AI」を開発した。
ナンディヤラ氏は、スマートフォンのマイクを使ってユーザーの心音を記録し、それを高度なノイズキャンセル技術にかけ、さらにクラウドでAIモデルを使って処理することで、不整脈、心臓弁の問題、心不全の初期症状、または冠動脈疾患に関連するパターンを特定し、ユーザーに知らせることができる。
初期の心血管系の異常はユーザーが症状を感じないことが多いため、一般的には定期健康診断や心電図、ストレステスト、心エコー検査、血液検査など、何らかの検査に引っかかる格好で見つかることが多いとされる。だが、医療へのアクセスが限られた地域に済む人などは、そのような検査をする機会がない人も多い。
テキサス大学ダラス校に入学したばかりのナンディヤラ氏は、幼いころからテクノロジー、コーディング、エンジニアリングに興味を持っていたといい、2022年には、本来なら数万ドルはかかるところを、わずか150ドルで購入可能な義手を開発。その翌年には学生向けに、科学、技術、エンジニアリング、数学のキットを製造・販売するスタートアップ企業、STEM ITを設立している。2024年には、Apple Watchを上回る96.1%の精度で、ユーザーの転倒を検出するというアームバンドを開発した。
すでに「Circadian AI」アプリは臨床現場でテストが行われており、米国で行ったテストには約1.5万人が、インドで行われた追加のテストには約3500人が参加したという。そして、いずれのテストでも、このアプリは心臓病の兆候を96%以上の精度で検出できたとのことだ(アプリの診断結果は、後に従来の診断方法によって確認済み)。現在のところ、このアプリは規制当局の審査と臨床検証を受けている最中で、訓練を受けた専門家のみが利用できる。
ルイジアナ州立大学の電気生理学者、ジャミール・アーメド氏は「Circadian AIのような心臓モニタリングデバイスやアプリには、医療の進歩に対する計り知れない可能性がある」と述べ「医療を受けられなかったかもしれない患者を早期に診断できれば、最終的にはこの疾患による長期的な罹患率と死亡率を低下させることができるかもしれない」と評した。
しかし一方で、アーメド氏は使用しているデバイスのマイクの「品質と忠実度」に起因する潜在的な限界が存在する可能性があるとも指摘した。歴史的に、医療専門家は心拍周期の特定の時点における特定の音や周波数を聴診器で聞き取り、診断を下してきたが、「これらのパターンは、たとえ専門家であっても不正確であったり、非特異的であったりすることがあり、確定診断にはやはり心エコー検査や心臓の画像検査が必要とされる」とした。
この点についてはナンディヤラ氏も、アプリが「心血管系の異常を検出するものであり、患者がどのような種類の心血管疾患を患っているかを検出するものではないことを明確にしており、心臓に何らかの問題があるかどうかを総合的に分析する事前スクリーニングツールに過ぎないと説明した。
なお、ナンディヤラ氏は、すでにこのアプリの技術を活用し、検出対象を肺炎や肺塞栓症といった肺関連の疾患にも拡張すべく取り組みを開始している。
医療の現場は慢性的に人手が不足しているところも多い。今後さらにAIを活用した医療自動化システムが開発されるようになれば、医師や看護師らと患者の双方の生活はいまより多少は楽になっていくかもしれない。
- Source: Circadian AI
- via: Smithsonian magazine BGR