しかし、問題を解決して「将来また乗りたい」とも

スターライナーの飛行士、ISSドッキング中のトラブルに「帰還できない」可能性感じたと語る

Munenori Taniguchi

Image ::NASA

NASAの宇宙飛行士スニータ・”スニ”・ウィリアムズ氏とバリー・”ブッチ”・ウィルモア氏は、英BBCのインタビューで、もし試験飛行で搭乗した宇宙船が国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングできていなかったら、地上に帰還できるかどうかわからなかったと述べた。

何度かの打ち上げ延期を経て、2024年6月5日に打ち上げられたボーイングのCrew Space Transportation-100(CST-100) Starliner宇宙船は、翌6月6日のISSとのドッキングに向けて飛行中に、ヘリウムガスが漏れ出る不具合が発生した。これに影響される格好で宇宙船は、いくつかの姿勢制御用スラスターの正常動作が難しくなった。

さらに、ISSへのアプローチの際には4基のスラスターが故障。飛行士は宇宙船を完全に制御できなくなり「非常に危険」な状態に陥ったという。だが、ドッキングを中止して帰還するにしても、再突入のための軌道離脱に必要なスラスターがすでに故障しており、後に引ける状況でもなかったため、NASAの地上管制と飛行士は、いったんスラスターシステムの再起動を試みることとした。

最初の再起動では、さらにスラスター故障が増えてしまったが、2回目の再起動を行ったところ、幸運にも1基を除く全てのスラスターが復旧し、なんとかISSへのドッキングプロセスを完了できた。

Image ::NASA

言うことを聞かないスラスターと悪戦苦闘しているさなか、ウィルモア氏はもう二度と地球を見ることができないかもしれないという考えが「間違いなく私たちの頭をよぎった」と語った。ウィリアムズ氏も「こんなことは予想外だった」という。だが、ふたりともすぐにどうすれば状況を打開できるかに集中したそうだ。

StarlinerでISSにやってきたふたりは、当初は6月14日に地上に戻る予定だった。だが、飛行中に多くの技術的問題が発生し、特にヘリウム漏洩と、スラスターの連鎖的な不具合の発生原因を突き止めるため、NASAは帰還を数回延期。最終的にStarliner宇宙船だけを無人で帰還させることを決定した。

地上に帰る足がなくなったウィリアムズ氏とウィルモア氏だが、その帰還に関してはStarliner宇宙船がISSを離れたあとにやってくる第72次長期滞在ミッションのクルーを乗せて9月に打ち上げられる、SpaceXのCrew Dragonの席を2つ空けることで対応した。だがこれにより、ふたりは第72次長期滞在ミッションが終わる今年3月まで、ISS滞在が延長となった。

もしISSにドッキングするまでに、Starliner宇宙船の全スラスターが故障していたら? またスラスターが故障した状態のまま、Starliner宇宙船に飛行士を乗せて帰還する選択をNASAがしていたら? ふたりはどうなっていたか、想像するのは難しい。

だが、ウィリアムズ氏もウィルモア氏も、帰還後はStarliner宇宙船の故障問題を解決することに取り組んでおり、技術的な問題が解決されれば、再びこの宇宙船に乗って飛行したいと考えているとのこと。ウィリアムズ氏はCST-100 Starliner宇宙船について「これは非常に有能だ」「他の宇宙船と比べてもユニークな機能を備えており、将来の飛行士にとっても非常に優れたものになるだろう」と述べている。

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