肉眼には影響しません

動作中のLiDARを撮影してiPhoneのカメラが壊れたという報告。なぜ撮ってはいけないのか

Munenori Taniguchi

Iamge:Jeguetelli/Reddit

RedditユーザーのJeguetelli氏は、iPhone 16 Pro Maxで新車のボルボEX90を撮影した際、ルーフ前端部に搭載されているLiDARがチカチカと点滅しているのに気付き、思わずその部分をクローズアップした。

すると、点滅の光がカメラの手ぶれに合わせ、画面上にカラフルな光点として残り、まるで夜空の星座のようになった。

この現象はズーム倍率を元に戻すことでなくなったように見えたが、もう一度ズームにすると再び現れ、以後は何を撮影するにしても、ズームすれば画面に無数の点が現れるようになってしまった。

これは明らかに、iPhoneのズーム側のセンサーに異常が発生している状態だ。ではなぜ、このようなことになったのだろうか。

原因は、LiDARをクローズアップ撮影したからであることは間違いない。LiDARは近赤外線のレーザーパルスを拡散するように照射し、その反射を読み取って、周囲環境を3Dデータ化するために用いられる。一般的な自動車には搭載されていないが、高度な先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能を有する自動車には搭載されていることが多い。

LiDARの光は、繊細なスマートフォン用のカメラセンサーから見れば、強力なレーザービームだ。そして、その目に見えない光が直撃した部分の素子がダメージを負ってしまい、画面上にカラフルな星がいくつも残ることになってしまった。

映像をズームアウトすると映像に問題がなくなったように見えたのは、単にiPhoneのズーム用のカメラから標準のカメラに切り替わったからだろう。

ボルボは、同社のユーザーサポートページで、LiDARにカメラを向けてはならないと警告している。特に、LiDARに正対するようにカメラを向け、接写した場合に、レーザー光による素子へのダメージを負いやすいのだという。例えて言えば、望遠鏡で太陽を見てしまうようなものだ。

現在はまだ、自動車市場全体のなかでLiDARを搭載する自動車の割合は高くない。ボルボEX90は約8万ドルであり、日本円にすると1000万円を軽く超える価格帯だ。

しかしこの先、LiDARの搭載率が高いレベル3以上の自動運転機能を持つ車が一般的になっていけば、何も知らずにチカチカするものを撮影したくなる人もきっと増えてくる。そうならないように、自動車メーカーもっとこの問題の認知度を高めていく必要がある。iPhone 16 Pro Maxの価格は、最低でも約19万円だが、それでもApple Care+に加入していないユーザーはいるだろう。

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