光線銃がレーザー通信を受信する位置合わせがシビア
ファミコンの光線銃が「レーザー電話」に。レトロハードを未来的ガジェットに改造した人物現る

1984年に発売されたファミコン用の光線銃(海外名:Zapper)は、当時としては非常に先進的なコントローラーだった。現代の視点から見れば構造はきわめてシンプルだが、それでも画面上のアヒルを「撃つ」ことができたのは、設計の巧みさを物語っている。
そんな懐かしの周辺機器を、実際に通話できるワイヤレス電話に改造した人物が現れた。ハードウェアハッカーのNick Bild氏である。
まず光線銃の基本構造をおさらいしておこう。銃口には光センサー(フォトダイオード)が内蔵されており、テレビ画面の特定位置からの光を検知する仕組みだ。トリガーを引くと、ファミコンからテレビに信号が送られ、画面は一瞬黒くなり、次のフレームで的の位置だけが白い四角として表示される(人間の目には見えない)。この白い部分から光を受信できれば「命中」、受信できなければ「外れ」と判断される。つまり、光線を発するのは銃ではなくテレビ側であり、見事な逆転の発想である。
Nick氏は、1880年にアレクサンダー・グラハム・ベルが発明した「フォトフォン」(光を使って音声を伝送した、世界初のワイヤレス電話)にヒントを得て、Zapperの分解・改造に着手した。彼の目的は、光源から送信される音声データを光線銃で “受信” できるようにすることだった。
YouTube動画では、スマートフォンから光で音声信号を送る仕組み、そして光線銃がターゲット命中を判定する構造を解説したうえで、両者の技術を統合したアイデアを実践している。
ただし、光線銃にはもともと、CRTテレビの走査周波数以外には反応しないよう設計された誤作動防止機構が備わっている。この制限を回避するため、Nick氏はフォトダイオードからアナログ信号を直接取り出す改造を施し、光の強度をそのまま音声信号として伝送できるようにした。
具体的には、送信側ではマイクやスマートフォンから音声信号をトランス(変圧器)を介してレーザーの光強度に変換。受信側の光線銃は、その変調された光を受け取り、変化をアナログ信号として抽出し、アンプを通じて音声として再生する。動画内では、スピーカーから実際にクリアな音声が流れてくる様子も確認できる。
もっとも、実用的な電話としての完成度は高くない。Nick氏も、最も難しい点はセッティングだと述べている。レーザーの光を光線銃のセンサーに正確に当てる必要があり、位置がわずかでもズレると通信が成立しなくなるという。
このプロジェクトは、音声を光で伝送する「光線銃フォン」をDIYで実現したものであり、実験的・エンターテインメント的な要素が強いが、技術的な知見と知的好奇心を刺激する試みといえる。すべての回路図や改造手順はGitHubで公開されているため、興味のある人はぜひ挑戦してみてほしい。
- Source: Nick Bild(YouTube)
- via: XDA