ディスプレイなし+スマホ連携でバッテリー持続を改良?

iPod Shuffle風の「首かけAIデバイス」、OpenAIとジョニー・アイブが開発中か

多根清史

Image:seeshooteatrepeat/Shutterstock.com

OpenAIは、Appleの元チーフデザイナーであるジョニー・アイブ氏が共同設立したAIデバイス企業「io」を買収・合併し、次世代AIデバイスの開発を本格化させると発表したばかりだ。デバイスの詳細は明らかにされていないが、著名アナリストのMing-Chi Kuo氏が、その製品像について一端を明かしている。

Kuo氏はXへの投稿で、以下のような情報をシェアしている。

  • デバイスはHumane社のAI Pinよりやや大きいが、iPod shuffleのようにコンパクトで洗練された形状になる見込み
  • ディスプレイは非搭載で、マイクとカメラを内蔵。音声操作や周囲環境の認識が可能
  • スマートフォンやPCと接続し、それらの演算機能や表示機能を活用する
  • 首にかけて装着する使用スタイルを想定
  • 量産開始は2027年を予定しており、デザインや仕様は今後変更される可能性もある

要するに、軽量化とバッテリー駆動時間の確保を優先し、画面を搭載せず、音声と映像によるマルチモーダルなインターフェースを志向している。ユーザーは、設定や操作、情報の確認などをスマートフォンの専用アプリを通じて行うことになると考えられる。

すでに発売されているAIウェアラブルデバイスであるRabbit R1やHumane AI Pinは、いずれも単体での使用を前提とし、ディスプレイ相当の機能(Humaneはレーザー投影ディスプレイ)を備えている。しかし、アクティブに使用した場合のバッテリー駆動時間は2.5時間から4時間程度にとどまり、アイブ氏はこれらについて「非常に劣悪な製品だった」と厳しく批判している。

なお、アルトマン氏とアイブ氏が共同で「野心的なAIハードウェア」の開発を進めているとの報道は、すでに昨年秋から浮上していた。OpenAIはこれまで一度も黒字化を果たしておらず、資金力に疑問の声もあるが、日本のソフトバンクが資金提供を行うと英Financial Timesが伝えていた

興味深いのは、OpenAIがアイブ氏との提携を発表したタイミングである。Kuo氏によれば、その動機のひとつは、最近のGoogle I/Oから市場の注目をそらす意図にあると推測される。実際、OpenAIは昨年もGoogle I/Oの直前に新AIモデル「GPT-4o」を発表しており、今回で2年連続の動きとなる。

このデバイスは「フィジカルAI」、すなわちAIを物理的なデバイスに組み込み、現実世界と直接インタラクションさせる技術という新しいカテゴリに属する。製品が成功するか、あるいはHumane AI Pinと同じ道をたどるかはまだ不明である。ただし、アルトマン氏は自宅でこのデバイスを試用し、「世界がこれまでに見た中で最もクールな技術になる」と語っており、自信をのぞかせている。

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