被害者側の一部団体からは法案が筋違いだとの指摘も

トランプ大統領、AIディープフェイク含む「合意なしの露骨な画像」の公開を禁止する法案に署名

Munenori Taniguchi

Image:VH-studio/Shutterstock.com

ドナルド・トランプ米大統領は、そこに描写される人物の合意を得ていない露骨な画像の公開を禁止する「Take It Down」法案に署名し、成立させた。この法案はAIを使用した、いわゆるディープフェイク画像も対象としている。

Take It Down法が施行されれば、SNSを運営する企業や団体などは、合意を得ていない露骨な画像(nonconsensual intimate images:NCII)に関する指摘があった場合に、48時間以内に対象となる画像の削除に向けたプロセスを開始し、そのために「合理的な努力」を行うことが義務付けられる。

この法案は、複数のテクノロジー企業や、被害に遭いやすい若者やその親、支援団体らの支持を得て、上下両院でも可決された。

しかし、NCIIとされる画像の公開に反対してきた一部団体は、この法案が、逆に被害を助長する可能性があるとし、法律化することに対し慎重に検討すべきだと警告している。

たとえば、法律として施行された場合に、削除となる対象の区切りがはっきりしないまま拡大解釈され、表現の自由を無視する格好になる可能性についての指摘がある。電子フロンティア財団(EFF)は、この法律の削除規定が「法案の他の部分で規定されているNCIIのより限定的な定義よりもはるかに広範なコンテンツカテゴリー(潜在的には、親密な内容や性的な内容を含むあらゆる画像)に適用される」とし、48時間以内という期限のために人による審査ではなく、自動化されたフィルターによる処理に頼ることになると述べた。

そして「オンラインサービスプロバイダー、特に小規模なプロバイダーは、確認を試みることさえなく、単に発言を非公開にすることで、煩わしい法的リスクを回避することを選択する可能性が高い」と主張。「同意なく個人的な画像が共有された人々を支援する上で、誤ったアプローチ」をしていると述べている。

さらに「Take It Down法は、プラットフォームに対し、現在暗号化されている発言も含め、それらの内容を積極的に監視するよう圧力をかけている」とし、それが「オンライン上のセキュリティとプライバシーにとって大きな脅威」になり得ると指摘。この法律が「深刻な問題に対処することを目的」としているのであれば、「悪用されやすい新たな削除制度を創設するのではなく、被害者に対する既存の法的保護を強化するような法律を強化すべき」だと主張している。

また、ジョージ・ワシントン法科大学院教授で、サイバー犯罪被害者支援団体Cyber Civil Rights Initiativeを率いるメアリー・アン・フランクス氏は、Take It Down法は「被害者に利益をもたらすどころか、むしろ害を及ぼす可能性が高い。虚偽の通報に対する適切な保護措置が欠如しており、対象範囲が過剰または不足しており、被害者に誤った希望を与えている」とBlueskyで述べている

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