両社とも互いが必要なくなりつつある?

OpenAIとマイクロソフトの「関係に亀裂」か。交渉が難航との情報

Image:Ascannio/Shutterstock.com

OpenAIとマイクロソフトは2019年から戦略的提携を結んでおり、マイクロソフトはこれまでに130億ドル超をOpenAIに投資。その見返りとして、OpenAIの技術への独占的なアクセス権と、唯一のクラウドサービスプロバイダーという立場を確保してきた。

しかし現在、OpenAIはマイクロソフトと「厳しい交渉」を行っていると英Financial Times(FT)が報じている。

今年初めにOpenAIは、5000億ドル規模のAIインフラ構築プロジェクトを発表した。日本のソフトバンクや米Oracleの支援を受け、米国内に独自のAIデータセンターネットワークを整備するという構想である。これを受けてOpenAIとマイクロソフトとのクラウド提供に関する独占条件が調整され、新規設備の独占権から「優先交渉権」へと移行している。

同時にOpenAIは、より柔軟な資金調達を実現するため、2024年末に営利企業化計画を発表した。しかしこの動きには、イーロン・マスク氏ら共同創業者が強く反発。営利化の差し止めを裁判所に申し立てただけでなく、AIの安全性や公益性を損なうとして市民団体による抗議活動も起こった。さらに、Metaなど競合企業も米政府に対し、OpenAIの非営利構造の維持を求める圧力をかけていた

そうした逆風のなか、OpenAIは5月初めに営利企業化の計画を正式に撤回し、今後も非営利団体が経営権を握る方針を表明している

しかしFTの報道によれば、この再編にマイクロソフトの承認が必要である一方、同社はこれに難色を示しており、交渉は難航しているという。マイクロソフトは、2030年以降に開発されるOpenAIの技術へのアクセス権と引き換えに、自社が保有する一部株式の放棄を提案しているとされる。

情報筋によれば、交渉が複雑化している背景には、OpenAIの企業向けビジネスの拡大と、Stargate Projectの推進による両社の関係性の変化があるという。提携当初の「支援する側とされる側」の構図が揺らぎ、むしろ競合的な側面が増してきているようだ。

実際、OpenAIは近年、マイクロソフトからの距離を取りつつある。例えば、推論モデル「o1」の仕組みについてマイクロソフトが説明を求めた際、OpenAIが技術的詳細の提供を拒否したとの報道もある。ChatGPTの成功により多くの資金調達先を得たOpenAIと、独自の生成AI技術を推進するマイクロソフトが、将来的に別々の道を歩む可能性も否定できないだろう。

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