サプライチェーンと在庫の最適化で対応

アップル、トランプ関税で「9億ドル」の費用増を想定。インドやベトナムに生産移管を急ぐ

Image:Tomas Ragina/Shutterstock.com

アップルCEOのティム・クックは決算説明会にて、トランプ米大統領が課した関税が事業に与えた影響について説明し、現行の関税が続いた場合の今後の影響についても見通しを明らかにした。

クック氏によれば、アップルはサプライチェーンと在庫の最適化に成功したため、2025年1月〜3月期における関税の影響は限定的であったという。さらに4月〜6月期については不確実性が高いものの、関税に変更がなければ約9億ドル(約1300億円)の追加コストが発生する見込みであると述べた。

また、関税の影響を緩和するための対策として、米国向けのiPhoneの生産拠点を中国からインドへ移す計画や、iPadやApple Watchなどをベトナムで組み立てる体制についても説明した。一方で、全世界の他地域向け製品については、引き続き中国での製造を継続する方針である。

米トランプ政権は、2025年2月4日から中国製品全般に10%の追加関税を課し、3月4日にはこれを20%に引き上げた。その後、追加の125%関税についてはiPhoneやMacなど主力製品は適用を免れたが、20%の関税は継続中であり、アクセサリー類など一部の製品には合計で145%という高率の関税が課されている。

クック氏は今後、半導体にも関税が適用される可能性があるとして、アップルへの影響がさらに拡大する懸念を示した。そのうえで、同社のオペレーションチームがサプライチェーンと在庫の最適化において「素晴らしい仕事をしている」と評価し、今後もその努力を継続していくと語った。

本人が公然とは語っていないものの、クック氏がアップルを関税圧力から守るため、トランプ政権に対してロビー活動を行っていたとする報道もある。同氏は関税強硬派であるラトニック商務長官に対して「関税がiPhone価格に与える潜在的影響」について協議したとされ、大統領やその政策を公に批判することは控えていたという。

こうした動きの影響もあってか、アップルの株価は一時下落したものの、その後持ち直している。このままトランプ関税が継続されれば、今年秋に発売予定の「iPhone 17」シリーズの米国価格は大幅な値上げが避けがたそうだ。ただし、アップルは値上げ幅を抑えるため、全世界的に広く薄く値上げする形で追加コストを吸収する戦略を取るとのアナリスト予想もある。

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