画像ではダークマターの分布範囲を青く表現しています
ペルセウス座銀河団で暗黒物質の「橋」発見。銀河の成り立ちを追う手がかりに

数百から1万におよぶ多数の銀河が、お互いの重力で集まり大規模な構造を形成しているのを銀河団と呼ぶ。
宇宙に銀河団はいくつもあるが、その中でも地球から2億4000万光年離れた位置にある、太陽の約600兆倍の質量を持つペルセウス座銀河団は、その成長を示す銀河どうしの合体の様子が見えないため、太古にすでに合体を終えて安定した状態にある「静穏な銀河団」と言われてきた。
だが、最近の天文学者らの研究によると、ペルセウス座銀河団の中心にあるNGC 1275をとりまく「主構造」と、そこから140万光年ほど西にあるNGC 1264の周囲に発見された「副構造」との間に、かすかな物質でできた「橋」がかかっていることがわかった。この「橋」は、両者に重力的な相互作用があったことを直接的に示している。

韓国・延世大学校の研究者を中心とする国際研究チームのメンバーであるJames Jee氏は、この発見によって「ペルセウス座銀河団で観測されていた非対称な構造や、ガスの渦も、銀河団の大規模な合体という文脈の中でつじつまが合うようになった」「これこそ、ずっと探し求めていた“最後のピース”だ」と、すばる望遠鏡のウェブサイト上で述べている。
この「橋」を形成するのは、宇宙で最も謎めいた物質である暗黒物質(ダークマター)だ。暗黒物質は光と相互作用しないため、目視することはできない。だが、重力との相互作用によって銀河の構造形成に影響を与えていると考えられている。
研究者らは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Supreime-Cam(HSC)で取得されたデータと独自に開発した重力レンズ解析手法を用いてペルセウス座銀河団のシミュレーションを行い、「副構造」にある巨大な暗黒物質の塊が、約50億年前にペルセウス座銀河団に衝突したことを突き止めた。この痕跡は、現在もペルセウス座銀河団の構造の一部を成している。
この研究に関する論文の筆頭著者であるKim HyeongHan氏は、「これまでの定説に挑むには勇気が必要だったが、共同研究者たちのシミュレーションに加え、最近のユークリッド望遠鏡やXRISM衛星による観測結果も、私たちの成果を強く裏付けている」と述べている。この研究は4月16日にNature Astronomy誌に掲載された。
- Source: Subaru Telescope Nature Astronomy
- via: Space.com