実用には厳しそう
M2 iPad AirでWindows 11が動作。EUのデジタル市場法のおかげ

EUでデジタル市場法(DMA)が施行されて以来、同域内ではiPhoneやiPad上で動作するアプリに対する制約が大幅に緩和された。その恩恵として、M2チップを搭載したiPad Air上でArm版Windows 11が動作するデモが披露されている。
開発者のNTDev氏はX上でこの成功を報告し、その様子をYouTube動画で公開している。今回の実現はiOSおよびiPadOSデバイスにおけるサードパーティアプリのサイドローディング(App Storeを経由せずにアプリを導入)がDMAにより容易になったことが背景にある。
DMAのもとでは、代替アプリストア「AltStore PAL」を通じて「AltStore Classic」をインストールすることで、アップルが公証しない「JITコンパイル」技術を活用するアプリの実行が可能になった。JITコンパイルについては、こちらの記事を参照されたい。
今回のデモは、JITエミュレーションを実装したUTMを用いてArm版Windows 11を動作させたものだ。UTMとは、iPadOS内でWindows 11をエミュレートするためのツールであり、実行時にJITコンパイルによってWindowsのコードを最適化することで、より滑らかな動作を実現している。
UTMには、JITコンパイルを利用する標準版と、インタプリタ方式(ソースコードを逐次解釈して実行)による「UTM SE(Slow Edition)」の2種類がある。後者はEU域外でもiOS/iPadOSデバイスの脱獄を必要とせずサイドローディングできるが、その代わり動作は遅い。NTDev氏は、JITコンパイルを利用可能としたAltStoreのStikDebugヘルパーアプリに感謝の意を表している。
今回のデモでは、不要なソフトウェアを削除した軽量版Windows 11「Tiny11」を使用して、パフォーマンスを向上させている。NTDev氏は「かなりスムーズに動作している」と述べているが、動画を見るかぎり、日常的にPCの代わりとして使える水準には至っていないようだ。
一方で、同じMシリーズチップを搭載したMac上では、UTMを利用してArm版Windows 11が実用的なスピードで動作する。iPadとの違いは、Macではアップルのハードウェア仮想化技術(Hypervisor.framework)使えることだ。NTDev氏も、「脱獄せずに仮想化機能が使えるようになった場合の可能性を想像してほしい」と述べている。
なお、Arm版Windows 11がタブレット上で動作するデモは今回が初めてではなく、過去にはOnePlusやXiaomiなどのAndroid端末上でも「起動」には成功していた。