1発のコストは約19円

英国軍、高周波でドローン群をまとめて撃墜する新型兵器のテストに成功

Image:Ministry of Defence(UK)

英国陸軍が、高周波(RF波)を使用してドローンの群れをまとえめて撃墜することができる、高周波指向性エネルギー兵器(Radiofrequency Directed Energy Weapon:RF DEW)の初テストを実施し、成功したと発表した。

一般的にドローンと呼ばれる、小型のリモートコントロール式マルチコプターは、いまや数千円で購入可能な玩具レベルのものから、数十万円もするような本格的なものまで、さまざまな製品が存在する。そして、その手軽さゆえか(各国で航空法などによる規制はあるものの)、空港付近では航空機とのニアミスがたびたび発生し、ロシアとウクライナ間の戦争においては、昨年1年間だけで実に1万8000回にもおよぶドローン攻撃に使用されたと言われている。

ドローンは数十~数百もの数の機体をまとめて飛ばすことが可能なうえその小ささも相まって、従来の防空システムを攪乱したり、回避したりできる可能性も考えられている。

このような厄介な飛行物体に対しては、銃弾などでひとつひとつ撃ち落とすよりも、一網打尽にするてだてを考える方が効率的だ。その方法のひとつとして、英国軍は指向性エネルギー兵器を用いることを考えた。

およそ4000万ポンド(約75億円)を投じ、英国国防省の防衛科学技術研究所(Dstl)、防衛装備支援庁(DE&S)、そして航空宇宙・防衛機器のタレスUK、セキュリティ・防衛企業QinetiQ、高出力RF機器メーカーのTeledyne e2v、モビリティ開発のHoriba Miraなどのからなるコンソーシアム「Team HERSA」によって開発されたRF DEWは、1kmほどの射程範囲内のドローンに対応する能力を備える。

電波を使うと言っても、妨害電波で制御を奪うのではなく、高周波の電磁放射をもちいることで、ドローンに搭載されるセンサーを狂わせたり、電子基板を焼損させたりして、ほぼ瞬時に撃墜する。高周波を発するシステムはほぼ自動化されており、1人のオペレーターだけで、車両などに搭載して適切な場所へ移動し、ドローンに対処できる。1回の電磁波の放射にかかるコストが0.1英ポンド(約19円)と低コストなのも特徴のひとつだ。

ウェールズ西部の射撃訓練場で行われた、RF DEWの実験でこの指向性エネルギー兵器を最初に試した第106王立砲兵連隊のメイヤーズ軍曹は、複数回の試験で100機以上のドローンを撃破した初演習の後で、「RF DEWは刺激的なコンセプトだ」と述べ「操作方法は覚えやすく、簡単だった。今後の開発により航続距離と出力が向上し、多層防空システムにおける大きな資産となるだろう」とプレスリリースでコメントしている。また、英国防装備支援庁(DE&S)の担当者は「現在直面している脅威と戦う能力を維持するだけでなく、将来に発生するかもしれない脅威に対処することが極めて重要であり、無線周波数兵器の開発はまさにその大きな部分を占めている」と述べた。

ちなみにこれは、英国陸軍がこれまでに実施した中で最大の対ドローン群訓練となった。ロシアやウクライナは最近、電波妨害の影響を受けずに対象物への攻撃を遂行可能にするため、遠隔操作ではなく、数kmの光ファイバーケーブルで繋がった状態のドローンを使用していると言われている。このようなドローンに対しても、今回のRF DEWは効力を発揮するだろう。

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