AI生成楽曲で一儲けしようとする者が増えている

「新しい楽曲の18%以上がAI生成」、音楽ストリーミングDeezerが発表。1月の発表から倍増

Image:Mino Surkala/Shutterstock

音楽ストリーミングサービスのDeezerは、2025年1月より「最先端のAI生成音楽検出ツール」を使用しはじめたが、最新の集計で「毎日2万曲以上のAI生成楽曲がアップロードされている」ことが明らかになったと述べている。

これは「アップロードされた全コンテンツの18%以上」に相当し、Spotifyなど他の音楽ストリーミングプラットフォームも含め、著作権リスクやアーティストへの公正な支払いに関する懸念が取り沙汰されるなか、AI生成楽曲で一儲けしようとする者が増えていることを示している。

Deezerのイノベーション責任者、オーレリアン・エロー氏は「AIが生成したコンテンツはDeezerのようなストリーミングプラットフォームに溢れ続けており、その勢いが衰える兆候は見られない」と述べた。

Deezerは、検出ツールを導入した2025年1月当時、AI生成楽曲の割合は約10%と発表していた。ほんの数か月で、それは2倍近くに達しようとしていることになる。一方でこの検出ツールがAI生成楽曲に施すタグ付けが、これらの楽曲を970万人の加入者に対するおすすめから除外するのに役立っていることも報告した。

なお、Deezerのツールは、部分的にAI生成された作品については検出したり、ペナルティを課したりすることはない。部分的なAIによる編集は、今日の楽曲制作においてかなりの部分を占めていると考えられる。米国著作権局のガイダンスでは「人間の著作者が作品の表現要素を十分に決定している」限りは、AI支援作品は著作権保護の対象となる可能性があるとしている。

現在、音楽ストリーミングサービスのなかでAI生成楽曲に対するポリシーを明確に策定しているのはDeezerとSoundCloudぐらいだ。SoundCloudは、「AIのみで生成された楽曲やコンテンツの収益化を禁止し、クリエイターがAIを人間の創作物の代替ではなくツールとして活用することを奨励する」とポリシーに記している。

その他のサービス、たとえばSpotifyやYouTube Musicは、AIに特化してはいないものの、AIがもたらすであろう悪影響の一部を、確実に監視する措置を講じている。具体的には(AIに限らないものの)肖像や声のなりすましをユーザーが報告できる制度を設けている。

Spotifyはさらに、一度に大量のコンテンツをアップロードするスパム行為のスクリーニングもしている。Spotifyでは以前に、機械的に生成したと思われる名前を持つ何十ものアーティストの名議で、無数のAI生成とみられる楽曲がアップロードされていたことが発見され、物議を醸したことがあった。これは、大量の楽曲をAIで生成して大量にアップロードすることで、チリツモ方式に再生ロイヤルティを稼ごうとする悪質な行為と考えられた。

ただ、Spotifyはアーティストからの苦情があった模倣と判断できる楽曲を削除しこそすれ、AI生成音楽をアップロードすることは特に問題視していない。Spotify共同社長兼CTO兼CPOのGustav Söderström氏は昨年11月、「クリエイターがこれらの技術を使い、私たちが報酬を支払い、人々がそれを聴く合法的な方法で音楽を作成し、成功しているのであれば、私たちは人々にそれを聴かせるべきだ」と述べていた

AI企業は、旧来のコンテンツ、たとえば書籍、映画、音楽や、インターネット上に公開されたコンテンツを一時的に使用して学習することは米国著作権法における「フェアユース」にあたると主張している(日本の法律にフェアユースはない)。だが、その素材になるコンテンツを制作した多くの人々は異なる意見を主張している。

主な反対意見としては、AI音楽スタートアップのSunoとUdioが2024年にレコード会社から著作権侵害で訴えられた例がある。アーティストたちも「無許可のAI学習」に著作権のある楽曲を使用する件について声を上げている。しかし、AI学習とフェアユースに関する新たな法的基準となりうる判決はまだ出ていない。

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