米国企業のインテルは蚊帳の外?

トランプ関税でアップルやNVIDIAの発注が米TSMC工場に殺到?4nmチップは30%値上げか

Image:Rokas Tenys/Shutterstock

米トランプ政権は、製造業を国内に呼び戻すべく、ほとんど全ての貿易相手国に対して高率の「相互関税」を課している。一度はスマートフォンやコンピュータなどの電子機器を対象から除外したものの、直後にこれらの製品にも「半導体関税」として課税する計画を明らかにしている

そんな情勢のなか、アップルやAMD、NVIDIAといったハイテク大手各社は、トランプ関税の不確実性に備えるべく、台湾TSMCのアリゾナ工場に大量のチップを発注していると報じられている。

台湾の電子業界誌DigiTimesによれば、この大量の需要増を受けて、TSMCには「すでに割高」とされていたアリゾナ工場の受注を拡大。限られた4nmプロセスの生産枠をめぐって争奪戦が起こっており、TSMCは値上げの正当性を得たとして、チップ価格を30%引き上げる予定とのことだ。

TSMCはこうした需要の急増を想定していなかったため、サプライチェーンには混乱が生じているという。アリゾナ第1工場の月間生産能力は2万〜3万枚のウエハーに限られており、現在は増産体制への移行を急いでいるとされる。

NVIDIAは最近、今後4年間で米国内に最大5000億ドル規模のAIインフラを構築する計画を発表した。この計画にはTSMCアリゾナ工場において、次世代「Blackwell」AIチップの生産をすでに開始していることも含まれている。

一方で、AMDもTSMCと緊密に連携しており、同社の第5世代EPYCプロセッサ(コードネーム「Turin」)が、TSMCの最新工場「Fab 21」において正常に稼働・検証されたと発表している

トランプ大統領が掲げる製造業の米国回帰戦略は、少なくとも半導体産業の領域において一定の成果を見せ始めているようだ。ただし、同大統領は4月8日、TSMCに対して「米国内に工場を建設しなければ最大100%の関税を課す」と警告したことを明らかにしており、今後さらに圧力が強まる可能性がある。

興味深いことに、今回の一連の報道では、米国の大手半導体企業インテルのファウンドリー(チップ受注生産)事業に関する言及が一切ない。

なお別の報道によれば、インテルとTSMCは合弁事業を設立することで暫定合意に至ったとされている。これはトランプ政権の後押しを受け、TSMCの技術力を活用してインテルのファウンドリー部門再建を狙う動きとみられているが、実際の成果が見えてくるのはしばらく先になりそうだ。

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