ざわ…ざわ…

トランプ政権の教育長官リンダ・マクマホン氏、教育ディスカッションで「AI」を「A1」と連呼し周囲が戸惑う

Image:Global Silicon Valley(YouTube)

カリフォルニア州サンディエゴで毎年開催されている教育、テクノロジー、労働力のイノベーションをテーマとするカンファレンス「ASU+GSV Summit」で、パネリストとして参加した米教育長官、リンダ・マクマホン氏が人工知能を意味する「AI」を何度も「A1」と呼び、他の登壇者や観衆をハニワ顔にさせる一幕があった。

この日マクマホン氏は、AIを用いた企業内学習ソリューションを提供するUpLimitのCEOジュリア・スティグリッツ氏、サンフランシスコに拠点を置くAIデータアノテーション企業、Scale AIのCTO、ビジェイ・カルナムルシー氏らとともに、パネルディスカッションに参加した。

そして、学校教育へのAI技術の導入に関する話題になったとき、発言権がマクマホン氏に回ってきた。

「子供たちはスポンジのように何でもあっという間に吸収します。学校にインターネットが導入されるようになったのは、それほど昔のことではありませんが、彼らはもうそれを使いこなしています」とマクマホン氏は述べた(米国の公立学校にインターネットが導入されたのはいまから20年程前)だ。

「さて、A1について見てみましょう。それが個別指導にどのように役立つでしょうか」

A1と聞いて米国の人々が思い出すのは、大方がクラフト・ハインツ社が製造する人気のステーキソースの名前のほうだと思われるが、話の流れからしても、かつてプロレス団体WWEでCEOを務めていたマクマホン氏が、突然ステーキソースの風味に関するうんちくを述べ始めたわけではないことは明らかで、登壇者はただ曖昧な表情で相づちを打つほかなかった。

Image:Kraft Heinz

さらに、マクマホン氏は「出典がちょっと思い出せないのですが、小学校1年生、あるいは就学前の児童などかなり早い段階から毎年A1教育を受けさせることを義務付ける学校制度が始まります」とも語った。

これについては、彼女が以前議長を務めていたAmerica First Policy Institute(AFP)のことだと言う声も聞かれた。この団体は「1A Policy Institute」と呼ばれることもあるからだ。だが、やはり文脈的には、マクマホン氏はAIについて述べていると捉えるほうが意味が通る話だった。

ややこしいことに、マクマホン氏は一連の発言のごく最初のほうでは正しく「AI」と発音しており、途中からそれがA1にすり替わっていった。もしかすると、彼女は「AI」をごく最近まで「A1」だと本気で勘違いしており、そのことをごく最近まで誰からも指摘されなかったのかもしれない(昔、筆者が務めた会社の上司にもSCSIインターフェースのことを「えすしーえすわん」と自信満々に呼ぶ人がいた。もちろん誰も間違いを指摘しなかった)。そのため話に没頭すると、A1のほうが口をついてでてしまうと考えられなくもない。

なんにせよ、トランプ政権が選んだ教育長官は、これまでに教育に携わってきた経験がないため、その適性に疑問をなげかける意見も一部にはある。

米国に限らず、教育の現場、特に学生たちはChatGPTのような生成AIツールを積極的に受け入れている。だが、その一方で、生成AIが陥る幻覚現象など、技術的な課題が根強く残っているのも事実だ。そうした要注意点を軽視したり見過ごした若い学生たちが、生成AIツールに頼りすぎてしまうと、誤った結果やねつ造された結果が導き出されたときに、本人にとって大きな問題に直面する可能性も否定できない。便利な道具が与えられても、上手く使いこなせなければ、できあがる物は良い出来にはならないものだ。

関連キーワード: