またクックCEOがトランプの説得に動く?
アップルはトランプ関税をどう乗り越えるか? すでに米国でiPhone在庫を積み増しか

先週、米トランプ政権は、世界中のほぼすべての国を対象とした相互関税を発表した。これにより輸入品は大幅に高価となることが予想され、アップルの株価は4月3日に9.3%、翌4日にも7.3%の下落を記録している。
たとえばiPhone 16 Pro Max(1TBモデル)の米国価格について、1599ドルから最大で2300ドル、実に43%もの値上がりになるとの試算も出ている。しかし、BloombergのMark Gurman記者は、アップルがこれらの関税の影響を軽減する可能性があると指摘している。
まず第1に、アップルは2017年のiPhone X以降、フラッグシップiPhoneの米国での基本価格を999ドルから上げていない。過去10年にわたり、同社はiPhone以外のベースモデルにおいても国内価格を据え置き、大型モデルの追加やストレージ容量の増加による価格調整で対応してきた。
しかし、トランプ大統領の関税政策は、その価格維持戦略を脅かしている。中国に対しては54%、台湾には32%、インドには26%、ベトナムには46%、日本にも24%もの高関税が課され、アップルが現在の価格水準を維持するのは困難になるだろう。同社はこれまで、中国からの輸入に対するリスクを避けるために、サプライチェーンの多様化を進めてきたが、今回の関税措置によってその努力も無に帰す恐れがある。
こうした状況のなか、Gurman記者はアップルが採る可能性のある具体的な対策を次のように挙げている。
- サプライヤーへの価格交渉:部品メーカーや製造パートナーに対し、コスト削減のための価格引き下げを求める
- 自社でのコスト吸収:アップル自身が一部の関税コストを吸収し、利益率の一部を削ることで、製品価格の急激な上昇を防ぐ。アップルの平均的なハードウェア利益率は約45%であり、一定の余裕がある
- 製品価格の調整:特に高価格帯のiPhone Proモデルにおいて、価格を引き上げる可能性がある。消費者が関税の存在を理解しているため、「アップルによる一方的な値上げ」とは見なされにくい心理的背景がある
- サプライチェーンの多様化:製造拠点を中国以外の国々に移転し、関税の影響を軽減する。ただし、これらの国々も新たな関税の対象となっており、完全な解決策とは言いがたい
- 製造拠点の地域分散化:将来的には、主要市場ごとに生産拠点を持つ「地域ごとの分散型製造戦略」の構築を目指す。ただし現状では生産能力に限界があり、特にiPhone Proのような高機能モデルの製造には課題が残る
- 下取り価格の見直し:古いデバイスの下取り価格を引き下げることで、新製品の実質的な販売価格を引き上げ、関税コストを部分的に相殺する
- ハードウェアサブスクリプションの導入再検討:iPhoneを月額制で提供するサブスクリプション型サービスの導入を、再び検討している可能性がある
その一方で、アップルは関税発効日より前に、iPhoneを含む主力製品を大量にアメリカ国内へ輸送・保管しているという。その在庫が続く限り、短期的には販売価格を据え置ける見通しである。
また、アップルは日本でも2022年以降、iPhoneの価格を引き上げており、最終的には米国を含む他地域でも値上げに踏み切ることを躊躇していないとGurman氏は指摘する。とはいえ、同社は関税によるダメージを可能な限り緩和すべく、あらゆる手段を講じる構えであり、ティム・クックCEOがトランプ大統領の一期目の時と同様に、免除措置を求めて動く可能性も高いと見られている。