名前だけが幾度も復活する「ゾンビブランド」化しています
Napster、VRイベント企業に約311億円で買収される。目的は知名度と音楽ストリーミング権?

2000年代にP2P技術を利用したファイル共有ソフトとしてリリースされたNapsterが、2025年に2億700万ドル(約311億円)で買収されることが明らかとなった。
買収するのはVR空間で音楽コンサートやリスニングパーティを開催したり、グッズなどの販売プラットフォームを手がけるInfinite Realityという会社だ。
Infinite RealityのJohn Acunto CEOは、「インフルエンサーやクリエイターなど、たくさんの視聴者を持つクライアントについて考えるとき、彼らが音楽や音楽コミュニティーを中心としたつながりのある空間を持っていることが非常に重要だと思った」とし、いまだ「音楽ストリーミング業界で音楽のために集える空間を持っている人はいない」と述べている。
そこで、メタバースでの音楽マーケティングにNapsterブランドを利用することを計画しているとしており、恐らくはNapsterが持っている音楽ストリーミングのライセンス契約も魅力的な資産として評価されたのだろう。
Acunto氏は、「Napsterほどインパクトのある名前はないと思う」と述べた。
Napsterを使ったことがある人は、おそらく大半が、このソフトウェアを使えば無料で音楽が手に入るという理由で使っていた。当時はまだスマートフォンなどは存在せず、人々は通勤、通学中にポータブルCDプレーヤーやMDプレーヤーで音楽を聴いていたが、1998年ごろにMP3形式の音楽データを再生できるDAP(デジタルオーディオプレーヤーの略。携帯型音楽プレーヤーとも呼ばれた)が登場した。当初のDAPはそれだけで音楽データを用意することはできず、音楽CDからデータをパソコンに取り込むリッピングと呼ばれる操作を行い、MP3と呼ばれる圧縮オーディオ形式に変換する手間がかかった。

そんなときに、インターネットから誰かがすでにMP3形式に変換した音楽データを、しかも無料で入手できるソフトとしてNapsterが登場したため、世界中でその手軽さに飛びついたユーザーがたくさんいた。もちろん無料で音楽を入手すれば、音楽アーティストにとっては損失でしかない。だが、音楽をインターネットで配布することは違法行為に当たるものの、ダウンロードしてそれを聴くこと自体は直接罪にはならなかったため、ユーザーの多くは少し罪悪感も感じつつも、無料で音楽を手に入れられるという誘惑に屈していた。
ただ、やはり音楽業界やミュージシャンの多くは、Napsterやそれに類似する音楽共有目的のソフトウェアを非常に問題視した。そして、アメリカレコード協会(RIAA)や、当時から絶大な人気を誇っているメタルバンドのメタリカが、Napsterを相手に訴訟を起こした。
これらの訴訟の結果、Napsterは敗訴し、2003年に真っ当な音楽配信サービスへと業態を転換した。だがそれも、2011年に同業のRhapsodyに買収されて終了し、今度はRhapsodyがNapsterを名乗るようになるなど、ブランド名だけが幾度も再利用される、いわゆる「ゾンビブランド」化していく流れとなっていた(日本ではタワーレコードと合併で音楽サブスクリプションサービスをNapster Japanというブランド名で展開したこともあった)。
最近では、2020年にMelodyVRがNapsterを買収し、VRコンサート事業の展開でその知名度を活用した。また2022年には暗号・ブロックチェーン企業がNapsterを買収していた。
- Source: Infinite Reality
- via: CNBC Engadget