ただし、飛行士の人選には影響しないと説明

NASA、アルテミス計画ウェブページから「初の女性および有色人種」文言を削除

Image:NASA

NASAは、アルテミス3号ミッションで計画する有人月面着陸ミッションに関する説明文から「初の女性、初の有色人種、初の国際パートナー宇宙飛行士を月に着陸させる」という文言を削除した。

この文言は有人月面探査計画を再開させる意義のひとつとして、NASAが繰り返し言及してきたものだ。

米国ではトランプ大統領による政権発足以後、多様性、公平性、包摂性、アクセシビリティ(いわゆるDEIA)関連の取り組みに関連するプログラムの終了、推進する部門や事務所の閉鎖などが大統領令によって推進されている。NASAのウェブサイトからも、これに関するあらゆる文言が削除されており、その最新の例がアルテミス3号における上記記述の削除となった。

DEIAの本来の目的は、歴史的また社会的に(具体的にはジェンダー、民族性、障害、文化、社会階級などによって)過小評価されたり、差別を受けたりしてきた人々に対し、フェアな扱いと社会への公平な参加機会を与えることを推進することだ。

だが近年は、DEIAの推進を政府が企業などに義務づけた結果、差別されてきた人々に対する行き過ぎた優遇措置が目立つようになり、また措置を受ける側がさらに過剰な待遇を求め始めるケースも目に付き始めていた。そこに政治的または宗教・哲学的な理由による批判が生まれ、先の大統領選挙ではDEIAに批判的な共和党のトランプ氏が支持を集めた要因のひとつにもなった。

NASAは、宇宙専門ニュースサイトSpace.comに対する声明で、今回のウェブページの文言削除について「トランプ大統領が署名した大統領令に従い、NASAはアルテミス計画の核となる宇宙飛行士の月面への帰還ミッションをよりよく反映するために文言を更新した」と説明した。

NASAのジャネット・ペトロ長官代行はDEIAの取り組みに関連するオフィスの閉鎖と関連プログラムの終了を指示する大統領令を受けて、NASA職員に同局のDEIAプログラムが「アメリカ人を人種で分断し、納税者のお金を無駄にし、恥ずべき差別をもたらした」とまで述べていた。NASAはトランプ政権発足後、連邦支出削減策の一環として、職員数を大幅に削減している。今後同機関の予算や職員数がさらにどれぐらい削減されるのかはわからない。

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