答えは「32分」

科学者が「完璧なゆでたまご」調理方法の研究論文を発表

Image:ElenaKaretnikova/Shutterstock.com

フェデリコ2世ナポリ大学とイタリア国立研究評議会の科学者は「完璧なゆでたまご」を調理するためにはどう調理すれば良いかを徹底的に研究し、それを論文にまとめて発表した。

日本を含むいくつかの国では各地の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が相次ぎ、たまごの価格は高止まりした状態になっている。しかしそんな状況にあっても、美食の国イタリアでは科学者がたまごを最もおいしく茹でる方法の研究に勤しんでいた。

科学者らによれば、完璧なゆでたまごを調理する際の問題点として白身と黄身でそれぞれ調理に適した温度が異なるだという。具体的に言えば、白身(卵白)は85℃で凝固するのだが、黄身(卵黄)の部分はそれよりも低い65℃で凝固してしまうのだ。

この難問を解決するため、科学者はまず数値流体力学シミュレーターを用いて、たまごの様々な調理手順をモデル化した。そして、そのシミュレーション結果を詳細に検討した結果、次のような調理工程を経ることで、研究者らが「完璧だ」と考えるゆでたまごができあがったという。

1 たまごを100℃に沸騰した熱湯に入れ、2分間ゆでる

2 熱湯から取り出したたまごを、こんどは30℃のぬるま湯に入れ、2分間待つ

3 以上を交互に、合計32分間繰り返す

研究者らは核磁気共鳴分析 (NMR) や、高分解能質量分析装置(HRMS)といった手法を用いてたまごを詳細に観察しつつ調理した。そして調理をしている間に、卵白の温度が35~100℃の間を行ったり来たりしたのに対し、卵黄は67℃で安定的に温度を維持したとのことだ。

Image:Pellegrino Musto and Ernesto Di Maio

こうしてできあがったゆでたまごは、研究者らの実食によっても評価され、その食感や五感への訴求力といった点でも満足いく結果を得た。さらに興味深いことに、栄養評価の結果、一般的な方法でつくったゆでたまごに比べて、研究者らのゆでたまごは卵黄部分のポリフェノールの含有量が多いことがわかったという。

ポリフェノールは緑茶や赤ワインなどに含まれる植物性の抗酸化物質で、苦みや渋み、香り、色素の元になる。鶏卵に含まれるポリフェノールは、もとはニワトリに与えられたエサに含まれていたものと考えられる。なお論文では、研究手法の応用先として「調理方法以外にも、硬化、結晶化、材料構造化の研究に利用できる可能性が見込まれる」と述べられている。

ちなみに研究者らは、この研究で確立した調理方法を「周期的調理(Periodic cooking)」と名付けた。「完璧なゆでたまご」は非常に美味かもしれないが、その調理法の名前はなんとも味気ない。

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