通常チップとProチップの性能差が開く?

アップル、「M5」チップ量産開始か。MacBook ProやVision Proが大きく進化?

Image:8th.creator/Shutterstock.com

2025年内に発売される「MacBook Pro」、「iPad Pro」や「Vision Pro」後継モデルには、次期「M5」シリーズチップの搭載が予想されている。これらチップは今年後半に製造が始まるとみられていたが、すでに量産段階に入っているとのサプライチェーン情報が届けられている。

韓国のIT業界紙 ET Newsは、アップルが次世代チップM5の量産を開始したと報じている。スペックなどの詳細には触れていないが、「AIのパフォーマンスが向上する」とのことだ。また、これまでのMシリーズチップとは少し異なる設計になる可能性も示唆している。

上述した未発表製品のうち、最もM5搭載の恩恵を受けるのはVision Proかもしれない。現行のM2チップ搭載モデルはApple Intelligence非対応だが、それはオクルージョン(3次元空間で手前にある物体が後ろの物体を隠す処理)や物体検出などのリアルタイム処理、そしてR1チップの補完などにフル稼働しており、AI処理をこなす余裕がないためだ。

次期Vision ProはパワフルなM5チップを搭載し、Apple Intelligenceに対応すると著名アナリストは主張していた。それ以外のハードウェア仕様と設計は、ほとんど変わらない見通しだ。

今回の報道で強調されているのは、最下位のM5チップと、上位の「M5 Pro」以上(「Max」や「Ultra」含む)ではチップのパッケージングプロセスが異なることだ。これにより、熱制御と性能のさらなる向上が期待できるという。「パッケージング」とは、製造された半導体チップを基板に搭載し、配線を施した後に、樹脂やセラミック等の材料で封止(モールド)する工程である。

これまで、アップルのAシリーズチップおよびMシリーズチップは、全てのコンポーネントを単一パッケージに統合するSoC(System-on-a-Chip)設計だった。1つの半導体上に、CPUとGPUを集積する作りだ。

しかし、M5 Pro以上のチップにはTSMC SoIC-MHパッケージング技術が使われるとのこと。これは、著名アナリストMing-Chi Kuo氏も言及しており、CPUとGPUが別々の設計になると指摘していた

従来のSoCが平面的な設計であるのに対し、SoICは3次元集積化技術であり、複数のシリコンダイを垂直に積み上げて相互に接続するものだ。

M5シリーズチップはN3Pプロセス、つまりM4チップに使われたN3Eと同じ3nmのプロセスルール(回路線幅)であり、改良されながらも性能アップは小幅に留まると思われる。それをSoCからSoICにパッケージングを切り替えることで、様々な面で底上げを図るのだろう。

今後のMシリーズ標準チップとPro以上のチップとは、これまで以上に性能差が開く可能性がある。そしてMacBook Proモデルは2026年に「全面刷新」が予想されているため、買い替えを検討している人はしばらく待ったほうがいいかもしれない。

関連キーワード: