個人情報の重み
人気SNS「BeReal」をプライバシー擁護団体が告発。同意するまで個人情報収集の要求を止めない
アプリが指定するタイミングで、必ず自撮りと周囲の様子を含む未加工写真を投稿しなければならないという、わざわざ個人情報や居場所を特定されかねないミッションの遂行を要求するSNSアプリ「BeReal」が、Z世代の間で人気を博している。
だがこのアプリがパーソナライズ広告のための個人情報収集に同意することを、毎回起動時に、ユーザーが同意するまで、執拗に表示するのは悪質だとして、フランスデータ保護局(CNIL)に苦情が申し立てられた。
苦情を提出したのはオーストリアのプライバシー保護団体Noybで、この団体は「BeReal」の、ユーザーに圧力をかけ続けるかのような状況下での同意はユーザーの自由意志ではなく、EU一般データ保護規則(GDPR)第4条11項に定められる要件を満たしていないと主張。CNILに対し、BeRealの親会社Voodooに罰金を科しGDPRに準拠させるよう求めている。
Noybは、2023年に欧州データ保護委員会(EDPB)が採択したガイドラインにおける「継続的なプロンプトの欺瞞的なデザインパターンは、ユーザーが繰り返し追加データの提供や処理目的への同意を求められることによって、処理目的に必要以上の個人データを提供したり、データの別の利用に同意するよう迫られたりする場合に発生する」「このような反復的な要求は、1つまたは複数のデバイスを通じて行われる可能性がある。利用者は、プラットフォームを利用するたびに要求を拒否しなければならないことに疲弊し、結局は承諾してしまう可能性が高い」という記述箇所を指摘している。
NoybはこれまでにもOpenAIやアップル、アマゾン、Netflix、マイクロソフトなどさまざまな企業に対してGDPR違反があるとして、各国で告発を行ってきている。
余談だが、BeRealが収集する個人情報には位置情報が含まれており、これと投稿における時間制限を組み合わせれば、ユーザーがどこにいるかをほぼリアルタイムで追跡できる。それでなくとも、相手ユーザーの生活圏を知っていれば、写真の背景の様子から居場所を特定するのは、Googleマップなどを使えば以外と簡単にできてしまうものだ。
ユーザーの多くはゲーム感覚でミッションをクリアすることにスリルを覚えるのかもしれないが、カメラを使用してはいけない場所や学校の授業・試験中、入浴中などにも投稿しているユーザーもいると言われ、一部の専門家などは、写真に写り込んだ自分以外の人のプライバシー情報の拡散やデジタルタトゥー化、ユーザー本人に対するストーカー被害に繋がるリスクがあることを指摘している。
また、BeRealの運営は自らはあくまで「ホスティングサービス」の提供企業であり、投稿される内容に関して責任を負わないとしている。