Steam Deckユーザー数も多くはないため、対策コストを掛けていられない?
『Apex Legends』、Steam DeckとLinuxからのアクセス禁止。チートの温床となっているため
人気の携帯ゲーミングPC「Steam Deck」上で遊べるバトルロイヤルゲームは数が少なく、『Apex Legends』はその希少な1本だった。『Fortnite』や『Valorant』、『PUBG: BATTLEGROUNDS』などは、アンチチートが正常に動作しない懸念からサポートしていない。
が、Apex Legendsのパブリッシャーであるエレクトロニック・アーツ(以下、EA)と開発元のRespawnは、まさに同じ理由から今後Steam Deckではプレイ不可にすることを発表した。
公式ブログによると、LinuxおよびLinuxを使用したSteam Deckは『Apex Legends』にアクセスできなくなるという。その理由は「チート対策の取り組みにおいて、Linux OSがさまざまな影響力あるエクスプロイト(脆弱性を悪用した不正プログラム)やチートの経路になっている」と判明したためとのことだ。
『Apex Legends』には、Steam Deckでも動作するアンチチートソフトが搭載されている。具体的にはEpic GamesのEasy Anti-Cheat(EAC)である。3年以上前からSteam Deckに対応しており、Epic Gamesの自社タイトル『Fortnite』にも実装されているものだ。
が、Epicはチート対策は不十分だとみなし、Steam Deckのアクセスを禁じた次第だ。ティム・スウィーニーCEO自らが「大規模な不正行為に対抗できる自信がない」と述べていた。
EAによると、Linuxのチートは非常に検出が難しく「比較的小規模なプラットフォームに対してチームが異常に高いレベルの集中と注意を払う必要があるほどのペース」で増えているという。また、Windows OS用のチートが、発見や防止しづらくするため、あたかもLinux用であるかのようにエミュレートされる場合もあるとのことだ。
そして「正規のSteam Deckと、Steam Deckを名乗る悪意のあるチート(Linux経由)を区別する確かな方法はない」ため、Steam Deckを含めて一律にLinuxを締め出す方針だと述べている。
Riot Gamesも、同様の懸念からLinux向けに『Valorant』と『League of Legends』をサポートしていない。
『Valorant』のアンチチート担当ディレクターであるPhillip Koskinas氏は、全般的にゲーム開発者がLinux対応を避けている理由を「カーネルを自由に操作でき、それが本物であることを証明するユーザーモードコールもない」「Linuxディストリビューションを不正行為専用に構築することも可能で、我々は太刀打ちできない」と説明している。
さらにKoskinas氏は「Steam Deckがセキュリティを適切に処理し、それが正規のデバイスであると完全に証明できれば、これらの機能を全て有効となり、クールなゲームが問題なくプレイできるのに」とも付け加えている。
昨年12月、上述のスウィーニー氏はSteam Deckに「数千万のユーザー」がいれば、『Fortnite』を対応させる理由が見いだせると述べていた。またEAも、「Linuxユーザーの少なさ」と「その影響がかなりの数のプレイヤーに及ぶ」ことを天秤にかけて、決定を下したと報告している。
つまり、Linux一般とSteam Deckを区別できるとしても、Steam Deckユーザーの絶対数がさほどではないため、莫大なコストを掛けて専用の対策を講じるよりも切り捨てるほうが合理的だ、と示唆しているようだ。
EAは、WindowsをインストールすればSteam DeckでもApexをプレイできると付け加えている。発売元のValveは、Steam DeckにWindowsを簡単にインストール可能とするデュアルブート機能を「優先度の高い」リストに載せているが、いまだに実現していない。
Steam Deckの搭載プロセッサーは、競合他社の携帯ゲーミングPCと比べて、さほど性能は高くない。それでも快適なプレイを実現できているのは、Linuxをゲームに特化させた「Steam OS」を使っている恩恵が大きいためだ。実のところ、Windows対応をあまり急いでいないのかもしれない。
- Source: Electronic Arts
- via: The Verge