インテルがゲーム機用のGPU設計は無謀のような

インテル、「PlayStation 6」受注に失敗か。引き続きAMDがチップ供給との報道

Image:Sunshine Seeds/Shutterstock.com

ソニーの次世代機「PlayStation 6」(仮称)の登場は2028年以降とみられているが、ゲーム専用機のライフサイクルから考えれば、すでに開発や関連サプライヤーの選定が始まっていてもおかしくはない。

そんななか、インテルがPS6用のチップ設計と製造の契約を獲得しようとしたものの敗れ去り、最終的にはAMDが勝利したと米Reutersが報じている。

その決め手になった1つが、現世代機PS5との後方互換性(以前のハードウェア用のソフトが動く)をめぐる問題のようだ。PS5とPS5 ProのAPU(CPUとGPUを統合したチップ)はAMDが供給しており、別のメーカーに切り替えることは後方互換性に支障をきたしかねない。これが2022年、ソニーとインテルの経営陣やエンジニアの間で「数ヶ月間」にわたって議論されたという。

しかし、インテルがチップ設計を受託したとしても、ソニーはチップ製造をTSMCに発注することを譲らなかったようだ。そのためインテルが各チップから得られる利益につき折り合いが付かず、代わりにAMDが引き続き契約を獲得したとのことだ。

歴代のソニーの家庭用ゲーム専用機は、1世代ごとに1億台以上は出荷されている。チップ設計企業にとってAIチップと比べれば粗利率は低いが、それでも新たな開発努力なしに、安定した利益を得られるビジネスである。また、パット・ゲルシンガーCEOが描くインテル再建計画において、ファウンドリ(チップの受託製造)事業を後押しするカギにもなるはずだったようだ。

最近のインテルは第13~14世代CPUがクラッシュするトラブルのほか、AIチップブームにも乗れず、傍観者の立場に置かれている。昨年、チップ製造部門は70億ドルもの損失を計上し、先月には1万5000人のレイオフを発表した。

そもそもソニーはPS4からAMDチップを採用しており、2世代続いたアーキテクチャをPS6世代での変更を検討していたことが驚きである。ちなみにAMD幹部は、2008年の金融危機後に倒産の危機に瀕していた状況が、ソニーとの契約のおかげで救われたと振り返っていた

もしもPS5のようにCPU・GPUともに同じ企業が供給する場合、インテルがGPU設計も担当することになる。インテルのArc GPUは純粋な性能だけ見れば悪くないが、ドライバーが熟成しておらず安定性に欠けており、ユーザーの評判は良好とは言い難い。

まして、GPUではNVIDIAに次ぐ高い評価を得ているAMDに取って代わることは非現実的でもあり、ソニーが同社と価格を交渉する上での材料にされたのかもしれない。Reutersは「インテルがPlayStationビジネスを失った」と銘打っているが、AMDがしっかりとPlayStationビジネスを確保している中ではミスリードのようにも思える。

ともあれ、この契約が成立すれば、インテルは300億ドルの収益を上げることができた可能性があるという。インテルは今回の報道につき「この見解には強く反対するが、現在および潜在的な顧客との会話についてはコメントしない」と述べている。

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